おとめ座
善悪を超えて
遠慮なく、躊躇なく
今週のおとめ座は、「鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる」(加藤楸邨)という句のごとし。あるいは、一転して力強いリズムに自分を乗せていくような星回り。
途中までは状況描写的で平板なリズムな掲句なのですが、結びの「ぶちきらる」で一転し、その力強い言い切りによって、内臓を一気に断ち切っていくかのような切断音が、乾燥した空気の中をどこまでも響き渡るよう。
冬につつく鮟鱇(あんこう)鍋は格別ですが、掲句の場合、味だけでなくその優れた韻律でも口が喜ぶこと請け合いでしょう。
そしてまさに、先週やぎ座に木星が入って以降、運気の“歯切れ”が増しつつあるのが今のおとめ座の人たち。これまで少しずつ育んできた実感を、ここにきて一気に解き放っていこうと、口火が切られるのを待ち構えているのようでもあります。
その意味で、12日(木)におとめ座から数えて「野望」や「大志」を意味する10番目のふたご座で満月が起きていく今週は、自分の中で温めてきた大それた考えを思い切って公にしていくにはちょうどいいスタートラインとなっていくはず。
遠慮なく、躊躇なく、既存のしがらみや過去の文脈を切断していくべし。
良心の疼きに反してはならない
「彼がいまやっていることは、すべて立派で、道義的なことだ。——しかし彼はそのことに、良心の疼きを覚えている。なぜならば、並外れたことを行うのが、彼の使命だからだ。」(ニーチェ、『喜ばしき知恵』)
偉大な業績を残した人物というのは、しばしば生きているうちに賞賛者をほとんど(全くではない)得ないように、みずからの良心のみに従い続けるというのも、確かに並外れた魂の持ち主に共通して垣間見える、優れた資質と言えるかも知れません。
もちろん、皆が皆、そうした魂の在り方を踏襲し続ける必要もないでしょうし、それだけの機会や能力に恵まれている訳ではありませんが、いずれにせよここで大事なことは、その時代の社会が設定している良し悪しの基準など、取るに足らないちっぽけなものだということです。
やりたいことがあるならば、それが“正しい”かどうかなど、気にする必要はないのです。ただ、そのやりたいことのの重みをみずからの魂において引き受けつつ、実現に向けて邁進していくべし。
今週のキーワード
ただ「並外れたことを行う」という使命