おとめ座
或る幻視を巡って
ビジョンの発生
今週のおとめ座は、まぶたの裏に咲く一輪の蓮華のごとし。あるいは、新たにひとつの宇宙が発生していくような星回り。
以前どこかで、LSDを服用した後、一輪の蓮華の花が目の中に発生していくのを視たという体験談を読んだことがあります。
花芯からつぎつぎと花びらが湧き出し、それが外へ外へとかぎりなくひらいていく。それはひとつの運動であり、秩序であり、同時に完全と無限との相容れがたい二つの相を備えていた、と。
固くつぼんだ状態から少しずつ開花していくその姿は、収縮した心臓が膨張するようでもあり、宇宙が幾つもの始まりから終わりまでの時間を経て点から極大へと向かうようでもあり、ウパニシャッドの「ブラフマン(宇宙我)の都城(身体)の中の白蓮華の家(心臓)」を思い起こさせます。
12月3日(火)に「拡大と発展」の木星が約1年ぶりに星座を移り、おとめ座から数えて「再誕」を意味する5番目のやぎ座へ入っていく今週のあなたの中でも、そんな幻視とも言い切れず、現実にもなりきっていない一つのビジョンが生まれていくかも知れません。
見えないものを見る
それにしても、この世界に数えきれないほどの花があるにも関わらず、なぜ蓮の花がこれほどまでに力強く、それでいて奥行きのある象徴となりえたのでしょうか。
仏教ではよく八葉の蓮華ということが言われますが、実際の蓮の花は、種類にもよるでしょうけれど、二十四弁のものが多いそう。そのちょうど三分の一である‟八”ということが殊更言われるのは、花びらがだいたい三重になっていて、一番外側のまだ認識できる範囲のものを数字に表しているのかも知れません。
かっちりと重なり合った花びらのその花の中には、なお未生以前の花びらが無限にしまわれていて、八の内にはまた次の八が、その内側にはさらなる八が潜んでいるのです。
そうしたビジョンを、飯島耕一は『見えないものを見る』という詩において、次のように表しています。
「眼を閉じたとき 最初にこみあげるイマージュが ぼくらの魂の色だ。 火の色、雪の色。」
今週のあなたもまた、まだ自分の内に潜んでいるビジョンに向かって、しっかりと目を閉じていきましょう。
今週のキーワード
心臓かつ宇宙