おとめ座
格闘する者に丸
神と闘う
今週のおとめ座は、「血に痴れてヤコブのごとく闘へり」(神崎縷々)という句のごとし。あるいは、暮らしを立てていくために、これまで以上に攻めの手段を取っていこうとするような星回り。
掲句は当時、結核と闘っている時に詠まれたもの。「血に痴れて」とあるのは、すでに呆れるほどの血を吐いていたのでしょう。
ヤコブは創世記に登場するヘブライ人の族長のことで、別名をイスラエルといいます。
今日、ユダヤ人がみなヤコブの子孫を称するのは彼に由来する訳ですが、「ヤコブのごとく闘へり」とは、ヤコブが川のそばで夜通し神(時代が降ると「天使」に変わった)と闘い、負けなかったというエピソードに紐づいています。
少し長いですが、聖書から引用してみましょう。
「皆を導いて川を渡らせ、持ち物を渡してしまうと、ヤコブは独り後に残った。そのとき、何者かが夜明けまでヤコブと格闘した。ところが、その人はヤコブに勝てないとみて、 ヤコブの股の関節を打ったので、格闘しているうちに腿の関節がはずれた。「もう去らせてくれ。夜が明けてしまうから」とその人は言ったが、ヤコブは答えた。「いいえ、祝福してくださるまでは離しません。」その人は言った。「お前の名はもうヤコブではなく、これからはイスラエルと呼ばれる。お前は神と闘って勝ったのだからだ。」 と言って、ヤコブをその場で祝福した。」
おそらく、ヤコブの格闘は、彼自身の自我(エゴ)との闘いであり、股を打たれて関節が外れたとは、彼のかたくなな心が氷解したことの表現だったのではないかと思われます。
29日(日)におとめ座から数えて「生計」を意味する2番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、作者のように爛爛と生への執念を燃え上がらせていくことになりそうです。
掛け算の心得
ヤコブのように強大な敵に立ち向かっていく時というのは、ただ個人の能力や努力をいくら足し算してもだめ。
なにか得体の知れない霊的大義や共通精神を憑依させて、思いきった掛け算をしていくのでなければ、状況を大きく打開したり前進させていくようなダイナミックな勢いというのは作り出せません。
今のあなたは、そういうダイナミックな状況打開を望んでいる一方で、そのための何かが足りないという心当たりもまた同時に出て来ているのではないでしょうか。
例えば、預言者ムハンマドの言行録『ハディース』には、
「力強いとは、相手を倒すことではない。それは、怒って当然というときに心を自制する力を持っていることである」
という一節が出てきます。
これは、自分の「弱さ」を見つめることの難しさを深く洞察した言葉でもあり、これは先のような掛け算に際して、最も重要になってくるものと言えます。
こうした意味での最後のツメを、脇を甘くすることなく、しっかりと詰めていけるかどうか。そこにこそ、今週は焦点が当たっていくでしょう。
今週のキーワード
足し算ではなく掛け算を