おとめ座
澄みわたる水の流れ
永遠なる不在
今週のおとめ座は、「芭蕉庵桃青は留守水の秋」(秋篠光広)という句のごとし。あるいは、目に見えない励ましを受け取り、自らも一歩踏み出していくような星回り。
掲句の前書きには「江東 深川」とあるので、この「芭蕉庵」とは松尾芭蕉が江戸市中での俳諧宗匠としての華やかな生活から引退して、独自の道を模索し始めた頃の棲み処のことを指しているものと見て間違いないだろう。
彼は、それまで慣れ親しんできた「桃青」という俳号を第一の号としながらも、第二の号として「芭蕉」を用いるようになったのだとか。
つまり「芭蕉庵桃青」という文言には、世俗の名誉や豊かさと縁を切り、新たな境地の開拓を目指した芭蕉への深い敬意が込められている訳だが、句の眼目はそんな芭蕉を「留守」と捉えている点に他ならない。
芭蕉は最後の旅となった『おくのほそ道』に至るまで、つねに旅に身を置いていくことで、本当の意味で俳句を芸術に域に高めていったが、先の「留守」という言い方は、芭蕉がいまだ永遠の旅の途上にあり、今もこれからも決してその存在感と影響力とを失わないだろうという力強い賛辞を贈っているのだ。
14日(土)におとめ座から数えて「共同的に在ること」を意味する7番目のうお座で満月を迎えていく今週は、作者にとって芭蕉がそうであったように、自分にとって今最も向き合うべき他者が誰なのかということが少なからず明らかになっていくことでしょう。
「水の秋」のような関わり
当時の旅に舟は欠かせない。そして、少なくとも作者にとっては、旅に身を置く芭蕉を乗せた舟は、今も澄んだ水の上に浮かび続けている。
掲句の結びが「水の秋」となっているのも、水という水が澄み切って、爽涼としていく秋の季節にこそ、芭蕉の高い志を重ねているからだろう。
手を伸ばせばいつでも触れられるほどそばにいることだけが、パートナーシップではない。むしろ、掲句において芭蕉は深川の庵を「留守」にしているがゆえに、その不在すなわち空白に「水の秋」が美しく染み渡っていくのだと言える。
今週のおとめ座のあなたもまた、作者の芭蕉との結びつき方と相通じる仕方で、改めて誰かと交わりを結んでいくことがテーマとなっていくでしょう。
今週のキーワード
「日々旅にして、旅を栖(すみか)とす」(松尾芭蕉)