おとめ座
涙と塩
カオスからコスモスへ
今週のおとめ座の星回りは、海水から塩を抽出していく作業のごとし。あるいは、漠然とした不安や期待が入り混じった内面世界から、“想いの結晶”を取り出していくこと。
すべて動物と同じく、人もまた塩を舐めなければ生きていけません。
これが不足すると、新陳代謝が悪くなって吹出物が出たり、倦怠感や筋力の低下を招いたり、目が悪くなったりする。つまり、からだの循環の機能を助け、健康を保全してくれる、生活においてなくてはならない名脇役こそが塩なのです。
かつて人々はそんな珠玉のごとき塩の結晶を、母なる海の水を濃縮し、あらゆる辛酸をなめて取り出してきましたが、今のあなたもまた、自分のいのちを支えてくれる“塩の結晶”、すなわち「人生の苦労」、そして「自分との約束」を抽出していく、非常に厳粛な作業の必要性を痛感しているのではないでしょうか。
今週はいつも以上に、自分の内面世界を見つめる時間を作ってみてください。
そして、見つめるだけで終わらず、それを言葉にしたり、絵や音やデザインに展開させていくことで、明日を生きていく上で必要なめぐみを取り出していきましょう。
よく生きるために
「生きること――それは、死に絶えようとする何ものかを、わが身から絶えず追放することを意味する。生きること――それは、わが身の中の、またわが身に限らず、脆弱で古くなった一切に対して、容赦なく苛酷であることである。
生きるとはしたがって――死に逝く者、衰弱した者、歳を重ねた者への畏敬の念をもたないことではないだろうか?常に殺害者であるということではないか。――しかしながら、老いたるモーゼは言ったものだ。「汝殺すなかれ!」と。」(『喜ばしき知恵』、村井則夫訳)
「生きる」という事態をめぐるニーチェの考察を引用するなら、先の海から塩を取り出していくという抽出作業は、こころの中の「死に逝く者」や「衰弱した者」、そして「歳を重ねた者」を殺すことなく天上へ、あるいは草葉の陰へと押しやって、それをしかと目を開いて見送っていくことに他ならないのではないでしょうか。
その意味で今週は、自分の中でいま死につつあるものと、それを超えて生きようとするものとの葛藤を通して、腑分けと昇華のプロセスを進めて踏いくことがテーマとなっていきそうです。
今週のキーワード
「汝殺すなかれ!」