おとめ座
健全な理性を育む
狂気に対抗する
今週のおとめ座は、みずからの頭脳を訓練に明け暮れさせる指揮官のごとし。あるいは、惰性と重力に振り回され、次第に乱れていく流れをなんとか食い止めようとすること。
人類の頭上には、今も昔も狂気の猛威がつきまとい続けています。つまり、人々のあいだで感覚・視覚・聴覚にもとづく独断の暴走や、それらをまとめるはずの頭脳の怠惰に溺れる喜び、投げやりな自暴自棄への誘惑が絶えずこちらの隙を窺っているのです。
物事の様相はますます速く移り行き、おそらく今後は、これまでよりもその変化はもっと大きく、目まぐるしくなっていき、狂気はますますその危険性を増していきます。
そしてそのさなかで、狂える人間は率先して独断と偏見に酔いしれ、まるで破滅へ導かれるかのように乱れたステップを踏み続けていくでしょう。
特に、鋭敏なアーティストや優秀な若者たちほど狂気という名の真実への欲望の虜となり、快活な調子でひた走ろうとする。
だから、あえて言おう。今こそ<節度ある愚鈍さ>が必要なのだと。
間延びしたリズムを飽きもせずに刻み続け、例外的な意見や出来事をせっかちなほど即座に「新しい時代の先駆け」に仕立て上げるのではなく、あくまで例外は例外として扱うような冷静さと落ち着きが。
今週は健全な慎重さをこそ心がけていきたいところです。
あえて「普通の人」であろうとすること
すこし小難しく言い過ぎたかもしれません。
要するに、私たちは「アーティスティック」だったり「かっこいい大人」になろうとすると、意図した理想から外れてどんどんオカしくなっていってしまう傾向にある、ということです。
あるいは、デキる人になろうとしたり、みんなに羨ましがられる存在になろうとして、かえってアリ地獄のような救いようのない破滅に陥っていく光景は、もはやそう珍しくありませんから、みんなどこかしらで見かけているのではないでしょうか(例えば、2004年からビックコミックスピリッツで不定期連載されている『闇金融ウシジマくん』など)。
そういう意味では、<節度ある愚鈍さ>とは、焦って格好のいい人やデキる人を目指すよりも「普通の人」でい続けられる品の良さと言い換えてもいいでしょう。
案外、そうした心掛けこそ維持するのがもっとも難しいように思います。
今週のキーワード
徳的知性