おとめ座
穴倉から脱け出す
みずから可能性を導く
今週のおとめ座は、「戦終る児等よ机下より這い出でよ」(渡辺桐花)という句のごとし。あるいは、予感に導かれて穴倉のごとき状況から脱していくような星回り。
掲句は、敗戦の日をめぐって元国民学校の教師であった作者が詠んだもので、「戦」は「いくさ」と読ませる。敵爆撃機の来週を知らせる警報が発せられると、教師たちはとりあえず机の下に子供たちをもぐりこませていたのだろう。
そんな子供等に、もう空襲の心配はなくなったから、出てきていいよと呼びかけている。
素朴に読めばそれだけの一句だが、よく考えてみれば敗戦の日は夏休みの真っ只中であり、当然教室で授業など行われていなかったことに留意すると、これは現実の光景ではないのだと気が付いていく。
おそらく、最後に絞りだされた「這い出でよ」とは、戦争に兵士として派遣され、戦地ではかなく散っていったかつての教え子たちに向けられた、ねぎらいとも慰めともつかない作者の声なき声なのだろう。
もう「戦(いくさ)」にも、戦へとおのれを駆り立てたものにも捕らわれることはない。だから、自由になりなさいと。それが戦争を生き残ってしまった作者が、自分の教え子たちに贈ることのできる精一杯の供養だったのかもしれない。
今週のあなたもまた、いつの間にかはまりこんだ穴倉から抜け出すための声なき声を聞き届けていくようなタイミングを迎えていくことになりそうです。
いったん自分を停止させる
例えば、朝がくると嬉しい。これはひとつの宇宙的感情であると同時に、それは穴倉から脱出していくための鍵でもあります。
つまり、そこから地球が西から東に回ってくれて、東京にも太陽の光が届いているんだな、とか。
ふとこの足元の地球が、底知れない暗黒空間の中を毎秒30Kmという猛スピードで回っていて、それを太陽が見えないロープで支えてくれているんだなとか連想が飛んでいって、次第にありがたいような恐ろしいような事実に思い至っていく。
そういうとき、人はなぜだか習慣化し目的を見失った自分の行動を停止させるだけの力が湧いてくるんですよね。そうして初めて、いま自分がしようとしていることが、いったい何のためなのか、もういちど再検討することができる。
そういう鍵を見つけることで、「這い出る」ことは実際に可能になっていくのだと思います。
今週のキーワード
鍵としての宇宙的感情