おうし座
生産とその基盤
花びらより蕊(しべ)を見ること
今週のおうし座は、「田にあれば桜の蕊がみな見ゆる」(永田耕衣)という句のごとし。すなわち、冬のあいだにこさえられた基盤を、再発見していくような星回り。
今年は早くももう桜が散り始めていますが、すっかり花びらが散ってしまうと、萼(がく)にはしばらく蕊(しべ)が残ります。雄蕊(おしべ)や雌蕊(めしべ)の蕊であり、花びらが飾りであり余剰としての文化だとすれば、蕊はその基盤としての生産活動を担う働き手と言えましょう。
作者は実際に農作をしていた訳ではないでしょうけれど、生産の基盤としての「田」にあれば消費活動しての花見にしても、自然と花びらの背後の蕊まで見通せるようになるのだと言っているのです。
花びらだけを見ていると、桜というのは本当にあっという間に咲いては散っていく一瞬のドラマですが、蕊から見ていくなら、桜というのは気の遠くなるような長い努力を積み重ねていくプロセスの賜物なのだと言えます。
今週のあなたもまた、これまでの目に見えない努力や重ねてきた苦労が、自分や周囲に喜びをもたらしていくための基盤となってきていることを、改めて実感していくことができるかもしれません。
受けとっていく義務
「ノブレス・オブリージュ(「高貴なるものに伴う義務」)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
単純に受け取れば、持たざる者や自分より恵まれていない人に施しをする責任がある、ということなのですが、今週のあなたにとってこの言葉は先の解釈と少し異なる意味で重みを持ちます。
それは、自身の体験から得られる教訓や戒めをきちんと「刈り取り」「摘んでいく」こと。そして、手元に残すものは必要最低限にとどめ、それ以外は他の誰かへ分配することに対する義務です。かつてあなたが幸いにも受け取った善意が、他の誰かの元に届くように。
もしあなたが「私は自分の実力ひとつでここまできた」と言い切れるならば、ここでそんな義務を負う必要はないでしょう。ですが、ひとつ心を鎮めるつもりで、どんな既得権益=基盤が自分を花開かせてくれたのか、その成果をどこにそれをお供えすればいいのか、5分でも10分でもいいので、そんなことを考える時間をつくって考えてみてください。
今週のキーワード
ノブレス・オブリージュ