おうし座
シリアスとユーモアのはざまで
意識の外にあるものへ
今週のおうし座は、「カメラ構えて彼は菫を踏んでいる」(池田澄子)という句のごとし。あるいは、自分が犠牲にしているものの代償を冷静に見つめていくような星回り。
写真を撮る人というのは被写体を第1に考え、ファインダー以外の現実を斬り捨ててしまうことから仕事が始まるので、「菫(すみれ)」でも何でも構わず踏みつけてしまう。また、撮られる側というのも、大抵はよく撮ってほしいし撮る側の期待に応えようとするので、自然とカメラのみを意識して、撮る側の足元事情など見ないものだ。
ところが、中には作者のような人もいて、カメラから意識を外して、冷静にカメラマンの足元を見ている。
カメラマンは夢中なのに、被写体は冷めているという皮肉さが効いている一句だけれど、ある意味でそれくらい入れ込まなければ、よい仕事なんかには絶対にならないのよね、ということも同時に作者は言わんとしているのでしょう。
今週のあなたもまた、自分が他者との関わりから何を手に入れようとしているものの価値を、払うべき代償の大きさによって分かるような瞬間が訪れるでしょう。
交流を味わう
ひとりの人間が生きていくには、様々な人の運命の交錯とたくさんの犠牲が必要です。とは言えやはり他人ですから、そこで犠牲となっている相手が結局どんな人間なのか、どんな運命なのかは、うすぼんやりとしている訳です。
そのことを真面目に考えすぎると、気味が悪くなってくるかもしれません。ですがそもそも他人なのですから、理解できてなくて当然なのだとも言えます。
ひとりの人間が自分の運命について語りだせば、その親や祖父祖母、兄弟姉妹、友人、恋人、同僚、上司、顔見知り程度の知人などが、さまざまにその人の像を浮かべ始めます。
分からないのは当然ことながら、この世に生きているということの醍醐味は、そうやって生きた交流を通して、互いの運命を明確にしていくことにあるのだとも言えます。
今週は、冷静に淡々とユーモアとシリアスのあいだに立って、そういう生の醍醐味を味わい、寄り添っていく時でもあるのだと思います。
今週のおうし座へのキーワード
「菫」の運命を思い描く