おうし座
アンバランスさと新たな質感
色気の震源地
今週のおうし座は、「泉汲むや胸を離れし首飾り」(猪俣千代子)という句のごとし。あるいは、定位置におさまっていた自分のバランスを、あえて崩していくような星回り。
作者による掲句の自註には「一ノ倉沢から土合へ下りる途中の泉であり、生き返るようであった」とある。
傾斜のある山道であり、疲れもあったのかもしれない。泉でのどの渇きを潤そうと、不意にしゃがんだ拍子に、すこし体のバランスが崩れたのだろう。自然とペンダントかネックレスが胸から垂れた。
それだけのことを詠んだ句だが、なんとも言えない艶めかしさを感じるのはなぜなのか。
やはり、ただ「垂れた」とするのではなく、あえて「離れし」とすることで、身体の微妙なバランスの崩れがより強調されているからというのも大きい。案外、色気というものはそういう崩れや揺れ、ほろこびの中で生じてくるものなのかもしれない。
今週は、あえてアンバランスにならざるを得ない環境や状況に身を置いていくことで、これまでの自分とは質感の異なるエネルギーを引き出していくことができそうです。
モーツァルトの場合
かの楽聖モーツァルトのキッチンで、誰かが皿を落としてすごい音がした時のこと。
「召使いたちは飛び上がって驚いたが、しかしモーツァルト本人だけは「おお、ディゾナンスだ」と言った。ただちに不協和音は音楽に属しました。そしてモーツァルトがその解釈を書き上げた方法は、彼に属しました」(ルイス・カーン、『ルーム、街路、そして人間の合意』)
同様に、今週のあなたは、自分では予想もしなかったであろう展開の中から、まったく新しい可能性が生まれてくるのを見いだすチャンスが訪れるかもしれません。
それをいかに自分のものとできるかが、今週の分かれ目となっていくでしょう。
今週のキーワード
存在の揺らぎ