
おうし座
額縁づくりは素直な気持ちで

詩人の感覚
今週のおうし座は、「蕗の筋よくとれたれば素直になる」(細見綾子)という句のごとし。あるいは、外からの視線ではなく、内からの確信に基づいてのみ行動していこうとするような星回り。
団扇のような大きな葉を広げる「蕗(ふき)」は初夏の季語で、煮物にして昔から食べられてきた。掲句では近くの野山や畑からとってきたばかりの蕗を水で洗い、茹でる前の下ごしらえとして筋を取っている。もし場所が台所なら、やや暗いなかで蕗のみどりが鮮やかに浮かびあがってくるはずだし、縁側などの明るい場所なら、庭の若葉の緑が手元にまで色を差し込んでくるかのように感じたかも知れない。
そうして、手間のかかる作業が思いがけずスムーズにいったことで気分がよくなり、「これできっとうまく煮えるだろう」と思うと、なんとなく素直な気持ちになったのだと言う。
掲句の肝は、「蕗の筋がよくとれたこと」と「素直になれたこと」がごく自然に因果関係で結びつけられている(ように見える)点だろう。しかし、実際のところはごく素直な気持ちでいられたからこそ、面倒な筋取りも無事に終わらせることができたのであって、それをあえて逆に表現したところが掲句の面白さであり、作者の詩人たる所以かもしれない。
おそらく、作者には最初に蕗を見つけた時から、「煮て食べたら美味しいだろう」という揺るぎない確信があったに違いないが、「蕗の筋を一本一本ていねいにとる」という行為が人を素直にさせるというのもまた真実なのではないか。
5月4日におうし座から数えて「心の支え」を意味する4番目のしし座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、一般的な成功法則などではなく、できるだけみずからの心の真実に即して行動していくべし。
肖像と額縁
19世紀に生きたスイスの哲学者アミエルの日記に、「五十歳までは、世界はわれわれが自分の肖像を描いていく額縁である」という一節があります。
だとすれば、私たちは人生のほとんどを本体である絵ではなくて、脇役であるはずの額縁づくりに費やしていることになるわけですが、これは案外その通りであろうと思います。
というより、絵を描いてから額縁を探すのではなくて、絵を納めることになる額縁=人生のアウトラインや大枠が定まってきて初めて、絵すなわち人生という物語やその内的意味がはじめて紡がれ、宿っていくことになるのではないでしょうか。
なお、アミエルが有名になったのは、死後にその膨大な日記が発見され、刊行されてからでしたが、幸か不幸か、現代という時代はアミエルの生きた時代と比べても、個人的奮闘だけではいかんともしがたい現実にぶつかる機会はまったく減っていないでしょう。
その意味で、今週のおうし座もまた、これまでの自分がどのような「アウトライン」を作ってきたのか、そして、そこからどんな物語を紡ぎたいのか、内的確信を頼りに模索してみるといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
「これを煮て食べたら美味しいだろう」という最初の確信





