
おうし座
余計な水分は飛ばしておくこと

塩と白梅
今週のおうし座は、『勇気こそ地の塩なれや梅真白』(中村草田男)という句のごとし。あるいは、他者によって価値づけられるものではなく自らが価値の根源であらんとしていこうとするような星回り。
「地の塩」というのは、聖書のマタイ伝に出てくる「あなたがたは地の塩である」というイエスの弟子に向けた言葉から取られた表現。塩が食べ物の腐敗を防ぎ、清めてくれることから、神を信じるあなたがたこそ、乱れゆく世の中において塩の役割を果たしなさいという意味です。
掲句の場合、「(あなたがたの)勇気こそ」が「地の塩」を塩たらしめるのだと言っているのでしょう。その「勇気」が具体的に何を指し示しているのかは曖昧なままですが、この句が学徒出陣する教え子たちへ贈られた句だったことを踏まえると、また見方も違ってくるはず。
安易に考えれば、「国のために死ぬ勇気を奮い立たせなさい」の意であろうと読むところですが、大和魂で大合唱しているような時代風潮のなか‟敵性語”と取られかねない聖書の表現を使っていることからも、むしろ真意は「つらくても生きて帰ってくる勇気を持て」というところにあったのではないでしょうか(作者は妻がクリスチャンで死の前日に洗礼を受けている)。そしてそれは、厳しい寒さのなか「真っ白」な花を咲かせる凛とした梅の姿を刻むことで、より一層強調されているように思います。
3月14日におうし座から数えて「創造性」を意味する5番目のおとめ座で月食満月(成就)を迎えていく今週のあなたもまた、そんな作者の真意をみずからの言動を通して成就していきたいところです。
知恵の塩を携えて
ここで改めて、隠喩的理解の伝統に基づく「錬金術」において、余分な水分を蒸発させ、乾いた残留物からさらに別の混合物をつくる工程について考えてみたいと思います。
この工程の背景には、本来軽やかで乾いた状態を最上とする「魂」の成分に、あまりに多くの液体が混ざると腐敗しやすくなって、淀んだ気分から逃れることができず、悲嘆と陰気に駆られるうちに、粘り気をもった泥沼のようになっていくといった心理プロセスが前提とされていることを踏まえると、いささか分かりやすくなるはず。
つまり、過去を削って事実を乾燥させ、感情のしがらみを浄化させていくことで、剝き出しの本質だけが残り、それがやがて人生に対する塩辛い洞察を含んだ知恵の塩になっていくものとされたのです。
ことほど左様に、乾いた魂というのは、この世界を客観的に見つめ得るだけの知恵の塩、すなわちウィットとユーモアとを携えているものであり、今週のおうし座もまたそうした魂の乾燥工程を経ていこうとしているのだと言えるかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
魂は軽やかで乾いた状態が最上





