おうし座
失われた質感を求めて
いなくなってしまったもの
今週のおうし座は、『また来ると思つて秋の蝶の来ず』(加藤かな文)という句のごとし。あるいは、心を軽くするための棚卸しや清算を試みていこうとするような星回り。
立秋を過ぎても見かける季節外れの蝶のことを「秋蝶」や「老蝶」などと呼びますが、冬が近づいてくるとその数もめっきり少なくなっていきます。
作者はそう遠くない過去に、この時期にめずらしいなと内心は思いながらも、目の前の用事や差し迫った予定に気を取られてついつい流してしまったことがあった。おおかた、きっとまた見かけるだろうから、その時にじっくりのその姿を目に焼き付けておこうと、となんとなく考えていたのでしょう。
しかし、待てど暮らせど「その時」は二度とやってこなかった。「秋の蝶」は春や夏の蝶にくらべれば、弱弱しくどこかさびしげですが、だからこそ作者の心に妙に尾を引いていたのかも知れません。
そうしたささいな、しかし決定的な機会の喪失をやっと受け止めることのできた際の心の感触が、そのまま句になったのが掲句だったという訳です。
もしここ数カ月のあいだに、うすうす感じていながらも正面から向き合うことを避けて、どこかスルーしてきたことがあるのなら、10月17日におうし座から「喪われたもの」を意味する12番目のおひつじ座で十三夜の満月(リリース)を迎えていく今週のあなたもまた、作者のように自然と心のままに感じたことを口に出してみる機会を設けてみるといいでしょう。
昭和的エロス
デジタル化が進んだ現代では、出会いも恋愛もアプリのワンタッチで始められるどころか、二次元世界のキャラクターに本気で恋をするだけに留まらず、事実婚を結ぶ人さえ出てきつつあります。
総じて、エロスもまたネットやスマホを通じて簡単に手に入れられるインスタントで気軽なものになってきつつある訳ですが、誰もがそうした便利さやスマートさをよしとしているかと言えばそうではないはずです。特に、体験の強度や生々しさを求めずにはいられないおうし座にとっては。
例えば、今よりだいぶ不便であったがゆえに、昭和の時代はずっと手間暇をかけてエロスを求めたものでした。しかしそうして悶々としたり、焦らされるプロセスこそが、昭和という時代を特別に色濃く、生々しい世界にしていたのかも知れません。
だからこそ、欲しいものを手に入れる喜びの強度を求める人ほど、「昭和」という記号にある種のロマンを抱いたり、そこに漂うノスタルジックな汗臭さをすすんで纏っていこうとするのではないでしょうか。その意味で、今週のおうし座もまた、ここぞというタイミングであえて時代錯誤なアプローチを取っていくべし。
おうし座の今週のキーワード
苦い汁をすする