おうし座
危うい季節
卑俗をいとわず
今週のおうし座は、『ハンモックより過ちのごとく足』(仲寒蝉)という句のごとし。あるいは、おののきの方へとみずからを身を寄せていこうとするような星回り。
「過ちのようだ」という比喩からは、作者が目前の光景からなにか取り返しのつかないことが起こる予兆を感じとり、おののきをもってそれを見ているという構図が浮かび上がってきます。
作者は病院勤めの医師だったそうですから、掲句も夜勤の仮眠室などでのワンシーンから着想されたものなのかも知れませんが、少なくとも「過ち」から「足」への言葉のつながりからは明らかになまめかしい想像力が働いた跡がうかがえます。
もちろん、現実にはそんなことが起こるはずもないということが大前提なのだとは思いますが、だからこそあえて卑俗に落ちることをいとわずに作者がみずから身を切ってみせたことで、作者のおののきが読者にもまた静かながらも伝播していくのかも知れません。
なぜなら、私たちが日々直面している現実には、いつも必ずしも聞き分けのいい大人のような存在としてある訳ではなく、時に何をしでかすのかわからない予測不能で気まぐれな子どものようになってしまうのだということを、みなどこかで心当たりとして胸に抱えているから。
そういう視点で見ると、句の冒頭が「ハンモック」から始まるのも、やんわりとギミック感を漂わせているように感じられてくるはず。
同様に、7月6日におうし座から数えて「遊び心」を意味する3番目のかに座で新月(種まき)を迎えていく今週のあなたもまた、危なっかしい子どもとしての現実にみずから手を伸ばして、一緒に遊んでいくぐらいのつもりで過ごしてみるといいでしょう。
UFO目撃体験
思春期には遍歴が必要ですが、今のような高度な産業構造が確立したグローバリズムの時代にはそれがほとんど不可能となりました。その代わり、映画『未知との遭遇』のように中年に入った40代あたりでUFOを見たりする訳です。
あれは「未知との遭遇」と言いながら、実際にはフライング・ソーサー(空飛ぶ皿、円盤)ということで「既知との遭遇」なんです。思春期のころに、自分の身体性の延長として世界に接触しようとした時に、「いい学校にいくこと」や「いい地位につくこと」だけが人生ではないと感じつつも、自分に見合う価値観が見つからず、ズレが生じてしまう。
その意味で、UFOというのは一種のデジャヴュ(既視感)であって、思春期で意識がズレたときに戻ろうという衝動の現われなのかも知れません。そこで、これまで当たり前に身辺にあった既知のものの中に、未知が帰ってきて、そこに飛び込んで改めて一人きりになったり、生まれ直しをしていくのではないでしょうか。
今週のおうし座もまた、ハンモックであれUFOであれ、自分のなかの潜伏していた衝動の容れ物を見出していくことができるかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
第二の転換期としての「思秋期」