おうし座
土がつく
古い自分を捨てる苦労
今週のおうし座は、『腰痛放浪記 椅子がこわい』という本の著者のごとし。あるいは、古い自分をやっとのことで、どうにか葬式に出していこうとするような星回り。
ある日ベッドで目覚めた直後に耐えられないほどの激痛に襲われたのは、日本の女性推理小説家の草分け的存在でもある夏樹静子。もちろん、すぐに病院の整形外科にかかったものの治らず、その後鍼灸医、産婦人科、温泉療法、手かざし療法から祈祷まで、あらゆる手を打ったものの大した効果もなく、発病して2年後ほどたつと、ほとんど仕事ができなくなったばかりか、不治の病であると思うようになったそうです。
次第に絶望感めいたものが心に食い込んで、「死」に取りつかれていくのですが、それがいよいよ終盤に差し掛かったところで、著者自身でも信じられない結末を迎えていきます。
それは心療内科の平木英人医師からの「あなたの大部分を占めている夏樹静子の存在に病気の大もとの原因があると思います」という診断から始まりました。夏樹はすぐに「元気になれるなら夏樹を捨ててもいいくらいです」と答えましたが、平木医師は即座に「元気になれるなら、といった取引はありえない。無条件で夏樹をどうするか、結論が出たら私に話してください」と告げ、それでも煮え切らない著者に「夏樹静子を捨てなさい。葬式に出しなさい」と最終通告をしてきたのです。
バカバカしいものだと思った夏樹も、頑として譲らない平木医師に根負けして、ついにベストセラー作家である「夏樹静子」との決別を決意した、その直後。嘘のように激痛が消え、それから二度と腰痛は起こらなかったそうです。
これはそれっぽい言葉で書けば「心身症」の一言で終ってしまう話なのですが、物理的な痛みが自分が作り出したものに過ぎなかったという体験は、実際のところ著者自身でさえ信じられないものであったはず。
3月20日におうし座から数えて「浄化」を意味する12番目のおひつじ座で春分(太陽のおひつじ座入り)を迎えていく今週のあなたに求められていくのも、なんらかの仕方で古びれてすっかり硬直してしまった自分と決別していくことに他ならないでしょう。
加護を得る
神話の英雄や半神たちには、幼い頃に何かの事情でいったん親に捨てられたことのある人物が異常に多いですが、これは生活条件の厳しかった古代においては、どこの国でも捨て子は必要悪だったという事情半面、あとは不肖の子や虚弱児などを洞窟などの「母なる大地の子宮」に委ねることで産土の加護を得られるようにという神頼み半分といったところだったのではないかと思います。
「土がつく」とは相撲の世界では負けることを意味しますが、ことその後を生き延びた捨て子たちにとっては第二の母としての「大地の力」を宿したことに他ならず、その加護によって尋常ではない働きが可能になっていった訳です。
思えば、ギリシャ神界最大の神であるゼウスからして、誕生と同時に父神の目を逃れるために、クレタ島の山の洞窟に遺棄されて、大地ガイアのふところに委ねられて育った子でありました。
彼らは自分の命運を母以外の誰かに委ねるという経験を早期にしていくことを通じて、自然と“手ずから”力を借りる術を身に着けていったのかも知れません。そして今週のおうし座にとっても、そうした自分に必要な手助けを適切な仕方で申し出ていくことは大事なテーマとなっていくはずです。
おうし座の今週のキーワード
「母なる大地の子宮」に身を委ねる