おうし座
夜空の昴
人生の真実を
今週のおうし座は、『寒昴たれも誰かのただひとり』(照井翠)という句のごとし。あるいは、それでも誰かと手をつないで生きていこうと心を新たにしていくような星回り。
作者は釜石で教師をしていた人で、掲句もまた実際に東日本大震災に直面した際に、生徒や地域の避難者とともに、体育館でひと月ほど避難生活を送っていた経験をもとに詠まれた句でしょう。
「寒昴(かんすばる)」は冬の夜空に冴え渡る美しいすばるの輝きのことで、すばる=プレアデスはおうし座の散開星団でもあります。そして、すばるという和名は、星が一カ所に集まってひとつに見えることから、「統ばる」「統まる」という言葉になぞらえてつけられたもので、古事記に出てくる古代の玉飾り「美須麻流之珠(ミスマルノタマ)」にも通じています。
しかし、一見すると集団のかたまりとしてかりそめの共同生活を送っていた被災者たちも、そして何かと数字で語られがちな地震と津波で亡くなった死者たちも、句にもあるように、その誰もがほんらい、誰かにとってのかけがえのない、たった一人なのです。
夜空には、それでも人は手をつないで生きていけ、そうすることしかできないのだと指し示すかのように、昴の六連星が組み輝いており、そこで作者は人生の真実を再発見したのではないでしょうか。
同様に、12月20日にはおうし座から数えて「ネットワーク」を意味する11番目のうお座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、心許なさからではなく1つの決意をもって人と繋がっていくことができるかも知れません。
冬の星座を思い描こう
例えばオリオン座や1等星のシリウスを含むおおいぬ座なども、冬の星座の代表格と言えます。乾いた空のはるか向こうの果て、ひしゃくの形で垂直に屹立している北斗七星は、さながらタロットの「星」のカードのように、暗く先の見えない状況に差す一条の光のような「希望の元型」とも重なっていきます。
ただし、それはそれはしがらみばかりのこの世界で、自分をまっさらな状態に置けた時に初めて見えてくるものであり、例えば実際に占いの場で「星」のカードが出てくるときというのは、感性や想像力の豊かさが担保できないと、単に夢見がちなだけで現実的には何ら発展することなく終わってしまったり、どうにも地に足がついていきません。
「星」のカードに描かれた女性が裸体で描かれているように、既存の固定観念や古臭くなったアイデンティティ(=服)を脱ぎ捨てる努力とセットとなって初めて、このカードは現実に明るい見通しを投げかけていくのです。
今週のおうし座もまた、体の半分を闇に溶かしつつ、「どんな闇の中にも光は存在するのだ」というつもりで、自らの明るい未来を見通してみるといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
闇夜の下で裸体となるとき、星はいよいよ輝く。