おうし座
おなじ船の乗組員として
「なにゆえ、憎みあうことがあろう?」
今週のおうし座は、夜の草原地帯を飛ぶ飛行士のごとし。あるいは、憎しみや疎ましさを超えて改めて絆を手繰り寄せていこうとするような星回り。
飛行機の操縦士であり作家であったサン=テグジュペリの『人間の土地』には、「飛行機とともに、われわれは直線を知った」という一文が出てきます。
この短い文章は、それまで牛や羊に依存していた人びとによって作られたくねくねと歪んだ道をたどってきた社会的通念が、都市と都市とを直線でつなげることを知った空からの視点を人間が手に入れたことで、何かが大きく変わっていくはずだということをほのめかしているのですが、サン=テグジュペリは続けて「わたしたちは、(…)宇宙的尺度で人間を判断することになったのだ。人間の歴史をもういちどさかのぼって読むことになったのだ」と述べると同時に、「なにゆえ、憎みあうことがあろう?」と問いかけ、こんな風にも書いています。
おなじ遊星によって運ばれるわたしたちは、連帯責任を担っているし、おなじ船の乗組員だ。新しい綜合をはぐくむために諸文明が対立するのはよいことだが、たがいに喰い合いをするなどとんでもないことだ。(堀口大學訳)
こうした文章が1939年に発表されていたことを知ると、私たちは愕然とせざるを得ないのではないでしょうか。
12月13日におうし座から数えて「結びつき」を意味する8番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、こうした飛行士の視点に通じるところから、改めて地上に生きる自分が担うべき責任ということを改めて問い直してみるといいかも知れません。
旧米軍兵の銀ブラ体験
以前こんな話を聞いたことがあります。かつて東京を爆撃した米軍の狙撃手が、数十年後老人になってから案内されて、たくさんの人たちが行き交う銀座の街を歩いたのだという。その時老人は、次のように漏らしたそうです。
戦時中、東京は灯火管制で真っ暗闇で、レーダーを睨みながらボタンを押すのが自分の任務だった。でも、自分が爆撃したところに、こんなにもたくさんの人たちが住んでいようとは、まったく想像もしていなかった。だから、本当に夢を見ているような気がする
昔は人間も、誰か他の人間を殺すことがあっても、面と向かって相手の顔を見て殺していたのが、近代以降、さまざまな飛び道具とともに、顔を見ずに殺せるようになっていった。やはり、そのあたりから変わってきたのでしょうね。
感性的なレベルで、負けそうだなと感じたら防衛本能を働かせて相手に合図を送ったり、逆に相手のそれをキャッチしたら怒りや恨みをサッと鎮めるということが、今の人間社会はますます下手になってきているのではないでしょうか。
その意味で、今週のおうし座もまた、恨みの奥にある防衛がふいに解かれ、自分自身をいかにゆるしていけるかが少なからず問われていくでしょう。
おうし座の今週のキーワード
ゆるしの隠された意味