おうし座
ひとつの鼓動となっていく
夢うつつの境目で
今週のおうし座は、『いづこよりか来たるいのちと春夜ねむる』(細見綾子)という句のごとし。あるいは、闇の奥底でうごめくいのちの感覚に浸っていくような星回り。
「春の夜」は完全な真の闇ではなく、水蒸気を含んで空気が潤うために、ほのかな光彩があたりをヴェールのように包んでいるように見えるもの。
その生ぬるい夕闇のなかをぶらり分け入っていくと次第に心身も和らいで、ただ歩いてるだけなのに、ときどき闇の先にいる生きものと触れあっているような気さえしてくる。
五・七・五という俳句の定型から外れた、掲句のいちじるしい破調のしらべもまた、柔らかい春の闇の底から、ひょいと懐へ飛び込んできた「いのち」への生々しい感触を伝えてくれているようで、なんとも秀逸。
春の夜において互いの輪郭をうしない、融け合っていくいのちといのちの姿は、はたして夢か現か、そのあわいか。
7日におうし座から数えて「再誕」を意味する5番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、へたに五感を研ぎ澄まさずに、一刻一刻の時の流れに心身を委ねていくくらいのつもりで過ごしていくといいでしょう。
自由なひとでなし
宵闇のなかで人型をなくし、人間としての輪郭を失っていくことで、かえって人は自らを正しくエネルギーの場として思い出していく自由が与えられていきます。
例えば、お母さんのお腹から産まれてくるとき、胎児は大きな「螺旋」を描いて、ずばーんと生まれてきます。そして、そこでは胎児はエネルギーの流れそのものであった訳ですが、いつからか人は純粋な意味でエネルギーの場であることをやめ、その流れをゆがめてしまうのです。
そういう意味では、かつてD・H・ロレンスが「文明とは何か。それは発明品などよりも、感性の生活のうちに、明瞭な姿をあらわす」と言ったのは、文明に対する痛烈な皮肉だったのだと言わざるを得ないでしょう。
今週のおうし座もまた、そうした自由なひとでなしになっていく中で、改めて何かと溶け合うような感覚を抱いていくことができるはず。
おうし座の今週のキーワード
「螺旋」を描いて