おうし座
「われわれ」へ
操られモード
今週のおうし座は、スライムのキングスライムへの合体現象のごとし。すなわち、より統一的な「われわれ」へと引き寄せられていくような星回り。
なぜ、私たちはしばしば相性のいい相手を選んで、一緒にいようとするのでしょうか。あるいは、そうした志向や行動は、本当にわたし自身が行っているのでしょうか。つまり、自分でも気付かないうちに、わたしではない「なにか」によって背後から操られ、しかもこの「操られている」という状況に気づかないよう仕組まれているのではないでしょうか。
精神医学者の木村敏は、こうして私たちが伴侶や相性のいい相手を選ぶ時こそ、「個人の意識の背後に貼りついた『無意識』が範囲をはみ出して」くる瞬間なのだと指摘しています。つまり、“アイデンティティ(自己同一性)”と呼ばれる個々の自己意識とは別に、互いに結びつくことで目覚める「われわれ」という統一的な自己意識のようなものが存在し、ときどき前者は後者の得体の知れない力に吸い寄せられ、流されていくのではないか、と。
現代社会では何かと他の人とは異なる「個性」だとか、個人の自由意志にもとづいた選択が尊ばれており、それは「個人主義信仰」とさえ呼べる代物ですが、よくよく考えてみると、私たちの人生をより大きな力で動かしているのは意識や個人の力より、木村のいう「無意識」、統一的な「われわれ」の方なのではないでしょうか。
2月14日におうし座から数えて「パートナーシップ」を意味する7番目のさそり座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうしたわたしを背後から操る「なにか」へと、自覚的に身をゆだねていくべし。
一個の生きた深層心理
フロイトの発見した「無意識」という概念をさらに深めて、「集合的無意識」ということを言いだしたユングという人は現代人がイメージするような心理学者というより、「一個の生きた深層心理」と言った方が近く、したがって彼の構築したユング心理学とは何かなど、本来は急いで説明したり解説したりするべきものではないのでしょう。
ただそれでもあえてユング心理学の特徴について述べれば、それは「布置(コンフィギュレーション)」であり、心とはさまざまな自分を表すシンボルの置きぐあいに他ならず、自我(エゴ)と自己(セルフ)であれ、童子と老賢者であれ、ユング心理学の中身は大体が2つ以上の自分自身の‟対話”から成り立っています。
そして重要なことは、ユングが個人の無意識のうちに「自我の中心」ではなく、むしろ自我がほしがっている「心の補償作用」を見ようとしたこと。つまり人のひねりだした思想や宗教だって、会社を作ったり結婚したりすることさえも、何かのついでの補償作用なのかもしれないと彼は見なしたのです。
今週のおうし座もまた、生きていく上で自分がどれくらい他者から力を借りなければならないのかを再認識しつつ、そのやり方について学んでいくことがテーマとなっていくはず。
おうし座の今週のキーワード
隣り合い、向かい合う何かに吸い寄せられていく