おうし座
マイ「山河」
得るためには失わなければならない
今週のおうし座は、<To lose to gain>という言葉のごとし。あるいは、生きものとしてより自然な考え方へと舵を切っていこうとするような星回り。
日本では伝統的に「勝てば官軍」という言葉が人びとの根底にありますが、アジアに目を向けると古代から「国破れて山河あり」という、アナーキスト的な、あるいは無常的かつ自然思想な考え方がありました。
原発にしろ、自分の仕事や勤務先の会社にしろ、なんとなく大丈夫だろう、そこまでひどくはならないはずだと思っていたことに、まったく大した根拠も目的も裏づけもなかったということが分かってしまうという幻滅や失望体験というのは、生きていればしばしばある訳ですが、先の2つの考え方を比較すると、「勝てば官軍」というのはそこに蓋をしてええかっこしいを続けようとすることなのだとも言えます。
逆に、後者の考え方の根底には、生きるっていうのは最後に無に没してしまうし、それが自然だろうという発想があります。つまり、もともと人間は「失敗」するようになっているし、成功というのも失敗が繰り返された結果であって、むしろ成功というのは失敗の型で出来上がってくるものだ、と。
1月22日におうし座から数えて「処方箋」を意味する10番目のみずがめ座で新月を迎えるべく月を細めていく今週のあなたもまた、ええかっこしいを続ける代わりに、「国破れて山河あり」という考え方に立ち返っていくべし。
朔太郎の悔恨
荻原朔太郎には、自分は一種の人生の敗残者だという思い込みが強くあったようですが、たとえば晩年に書かれた「物みなは歳日と共に亡び行く」という詩には、その感が強くあらわれているように思います。
わが草木とならん日に/たれかは知らむ敗亡の/歴史を墓に刻むべき。
われは飢ゑたりとこしへに/過失を人も許せかし。過失を父も許せかし。
彼は34歳で結婚した妻と結婚10年後に別れており、その際、妻は一青年と出奔し、朔太郎は2人の娘を連れて実家に帰り、離婚と家庭崩壊の苦悩により一時的に生活が荒廃しています。もちろん、傍目から見れば「日本近代詩の父」と称される彼の人生は華やかな成功に彩られていた訳ですが、それらで相殺されてもなお、彼のこころには深い悔恨が残されていたのでしょう。
今週のおうし座もまた、自分のこころの奥底に残されている苦悩の痕跡を改めてなぞっていくなかで、自然と立ち返っていくべき「山河」を見出していくことができるはず。
おうし座の今週のキーワード
過失を父も許せかし