おうし座
たおやかに、たおやかに
貝殻の神秘的な形成
今週のおうし座は、ヴァレリーの「貝」という文章の一節のごとし。あるいは、自分のうちから新たな生のリズムが蠢き出していくような星回り。
生命のうちには時にきわめて明晰で明確な幾何学的精神がかがやくことがありますが、詩人のポール・ヴァレリーは『海の驚異 貝』のなかでその一例としての貝をとりあげ、次のように述べています。
ある結晶、ある花、ある貝殻は、感覚できるすべてのものがもつあの通例の無秩序から脱却している。それは特殊な対象であり、われわれが無差別にながめる他の一切のものとくらべて、思考にとっては神秘的であるが、目にとってはいっそうわかりやすい。
確かに出来上がった貝殻の渦巻きは神秘的ですが、真に神秘的なのは出来上がった形というより、その形成の過程でしょう。
海産では9割以上の巻貝が右巻きであるとしても、貝殻の巻き方を右にするか左にするかを決める最初の選択にあたって、なんという生命の決定が下されていることか。生命は伸びあがるのでなく、むしろまず回転することからその飛躍を始めるのであり、同種の渦巻きを裏切って左に巻いた貝殻にいたっては、なんと夢のごとき存在なのか。
その意味で、12月8日におうし座から数えて「生きがい」を意味する2番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自身を形成した最初の回転を思い出しつつ、そのリズムに改めて身をゆだねてみるといいでしょう。
「一つの快楽としての呼吸」を
リズムという点から鑑みると、現代人のほとんどは「過換気症」的な状態にあると言われています。すなわち、息を吸い過ぎてしまって、呼吸のリズムが乱れているのです。これは過度なストレスで身体が興奮状態にあるときに陥りやすい症状なのですが、言わばそれが慢性化している訳です。
気分的には何かに追われている、慌てている感じで、つねに何かをしていなければならないという強迫的な焦りや不安やイライラを抱えており、何か特別な問題に直面していなくても、身体の状態そのものが不安やイライラに陥りやすいにも関わらず、多くの人ははっきりした自覚もなくそういう状態にあるのです。
これは近代に欧米で称揚されてきた合理主義やその成果としてのテクノロジーが、精神と身体をつなぐ半自覚的な営みである呼吸を完全に抑圧・忘却することによって広まってきたことへの反動という見方もできるでしょう。
ただその一方で、哲学の立場から西洋的な合理主義を乗り越えんと仕事に取り組んだ西田幾多郎などは、「かかる世に何を以て楽しみとして生きるか」という自問に対して「呼吸するも一つの快楽なり」と答えており、この言葉はいまのおうし座にとって十二分に立ち戻る価値のあるものとして感じられてくるはずです。
おうし座の今週のキーワード
呼吸の「黄金比」に立ち返る