おうし座
みこころの行われますように
北風の季節に
今週のおうし座は、『北窓を塞ぎて今日の午睡かな』(永井荷風)という句のごとし。あるいは、改めてきっちりと生活の優先順位をつけていこうとするような星回り。
日本家屋では伝統的に南北に窓をあけ、風の通り道をつくってきました。そして冬が訪れれば、今度は家のなかに冷たい北風が入り込まないよう北の窓を閉じたり、戸の隙間などに紙を貼る目貼りをするなどして、冬ごもりのための準備を整えたのです。
そして、今の日本もまた、まさに国力が低下し、国民がすべからく貧しくなっていく冬の時代に突入しつつある訳ですが、掲句はそうした社会のなかでおうし座の人たちがいかに生くべきかを端的に指し示しているように思います。
すなわち、あなたの心身を蝕み、温もりだけでなく生きる気力さえも奪い去るような空気感を漂わす流入径路があれば、きっちりとそれを塞いで、生活空間に入ってこないようにしていくこと。そして、明日(未来)の不安にあえぎ、昨日(過去)の苦しみに引き戻される代わりに、「今日の午睡」を最優先していのちを養っていくこと。
その意味で、11月1日におうし座から数えて「世間との関わり方」を意味する10番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、ここぞというタイミングでそうした“冬構え”に取り組んでみるといいでしょう。
間を空ける
例えば、ちょっとやそっとではどうにもならない問題を問題として本気で前にするということも、「北窓を塞ぐ」ためのコツなのですが、それを大真面目に実践した人物としてシモーヌ・ヴェイユが挙げられるのではないでしょうか。
内面に沈黙をつくりだし、いっさいの欲望、いっさいの意見に口をつぐませ、愛をこめ、たましいのすべてをあげ、言葉にはださずに、「みこころの行われますように」と思いをつくすとき、次にこれこそどうしてもしなければならぬことだと、あやふやさの一点もなく感じられることがあったら、(もしかすると、ある点では、これも思い違いかもしれないのだが……)それこそ、神のみこころである。(『重力と恩寵』、シモーヌ・ヴェイユ、田辺保訳)
人が神のみこころそのものを知ることは決してできませんが、祈りにおいて個別的な事柄や思惑を頭の中から祓っていくことは決して不可能ではないはず。彼女の場合、「ただゐる」という実践は、そのまま哲学的思索となり、生き様にまで昇華されていったのかも知れません。
今週のおうし座もまた、彼女ほどではないにせよ、内面に沈黙をつくり出す(=間を空ける)ことが、気持ちよく「午睡」していくためにも少なからず必要となってくるでしょう。
おうし座の今週のキーワード
いのちを養うことこそ、神のみこころである