おうし座
綾と孤独
鬱は治る
今週のおうし座は、斎藤茂太の『女のはないき・男のためいき』という語のごとし。あるいは、男と女によって作られる社会と人生の綾をしげしげと眺めていくような星回り。
精神科医で随筆家だった斎藤が最晩年に著した本の題が『女のはないき・男のためいき』(2003)というもので、その粋な雰囲気とは裏腹に、内容としては鬱は治るというものでした。
いわく、鬱の症状で目立つのは「億劫」という現象であり、何かを決めたり行動したりしなければいけないのに、なんだかんだとグズグズしているのは、鬱の初期症状かすでに進行しているかのどちらかだから早く対処すべき、というのが見立て。
で、そこから男には判決の自信が、女には解決の自信があれば鬱は治ると打ち出すあたりが著者の面目躍如訳でしょう。そこで警戒すべきは、男の溜息と女の鼻息ときたもんだ。たまの溜息や鼻息はいいけれど、それがクセになってくるのが厄介だと言うのです。
すなわち、男の溜息というのは、胃が痛いだの腰が痛いだの女房が冷たいだのと自分の身に起きた症状に折り合いをつけるべくつかれることが多いけれど、男はそれを自分の手で解決できなくても、こうすべきと自分で決めることさえできれば自信がつく。一方、女の鼻息で困るのはストレスを病的に発散しようとするヒステリーで、女は誰が方向性を決めようとも、結局それを自分なりの方法で解決さえできれば満足するし、そこを男に解決されてしまうことには我慢ならないのだ、と。
25日におうし座から数えて「あいだ」を意味する7番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、男と女それぞれのおかしさや面倒くささを認識しつつも、それをどこかで楽しんでいく余裕を持ちたいところです。
ノイズをカットするために
どこかで「万有引力とはひき合う孤独の力である」と谷川俊太郎さんは書いていましたが、男女のあいだで綾が織りなされていく原動力もその一種と言えるでしょう。
ただ、互いに自然とひき合っていることを認めるのは実際にはとても難しいことです。それは街やネットに溢れているエッチな広告だとか、「ランチの時間だから食べなきゃ」と脳内に植えこまれた自動プログラムとか、いろんな電気信号(ノイズ)を受信しまくりながら日々慌ただしく生きていると、いつの間にか足元がお留守になって、どこに立っているのか忘れてしまうから。
あなたはどこに立っているんでしょう?そしてあなたの芯はどこにあるのか?それを感じながら足元を支えるためには、どれくらいの力を蓄えていく必要があるのでしょうか。おそらく、それを知るために人は独りきりで歩く時間を確保していかなければならないのだと思います。
自分ひとりで歩くなら、どこを歩こうか。今週のおうし座はそんなことを、朝、窓を開けながら考えてみるといいかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
男は男なりの鬱、女は女なりの鬱があってこそ