おうし座
ちょっとここらでひと休み
沢蟹の本能
今週のおうし座は、『沢蟹や石の間に水休む』(小野あらた)という句のごとし。あるいは、できるだけ気持ちが休まるような時空に身を潜めていくような星回り。
沢蟹はある程度水が綺麗でないと生きられないため、川の上流から中流にかけての岩の下などに生息していることが多く、個体によっては10年ほど生きるものもいるのだとか。
掲句は、そんな小さくて、ささやかで、普通なら見過ごされがちな存在への呼びかけから始まって、石の間で川の水も休んでいるのだという、やはりささやかな発見を並置させていきます。なるほど確かに、上流から下流へ、海へとたえず一定方向に流れ続けているかのように見える川の水の勢いも、沢蟹が住んでいる石のはざまでは、静かで穏やかな表情へ打って変わり、まるでそこでひと休みしているようにも感じられます。
沢蟹は、そういう場所を本能的にかぎつけているのだと思いますが、ある意味でそうした能力は、大量の情報が奔流のように押し寄せるなかで生きなければならない現代人がもっとも必要としている能力なのかも知れません。
その意味で、7月29日におうし座から数えて「休息」を意味する4番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が心から穏やかで、静かな気持ちでいられる場所をいかに見出し、どれだけそこに身を置いていけるかということがテーマになっていくでしょう。
無理な自立より素直な依存を
2010年にNHKが製作した特集ドキュメンタリーをきっかけに「無縁社会」という言葉がネットを中心に大きな反響を呼び、その年の流行語にもノミネートされました。それはバブル経済の陰で地縁や血縁、社縁がじわじわと解体され、現代人が改めて自立と孤独とを重く課せられつつあることを暗示する出来事だったように思います。
人びとは自己の生の意味を自分ひとりで見つけ、自分だけの人生をつくり出すことを余儀なくされ、それまで以上に「個人」であることを求められるようになっていった訳です。あれから10年以上が経過し、社会はどうなったか。期待された「自立」を果たそうと懸命に努力してきた人ほど、その裏で身体的、心理的な問題を抱えていたり、慢性的な中毒症状に悩まされていたり、なにより、躁うつ病を発症したり、公表する人もだいぶ増えてきたはずです。
つまり、「自立」は幻想であって、かえって依存に受容的でいられる人ほど有能だったり、健全でいられるということが、だいぶ明らかになってきたのではないでしょうか。
今週のおうし座もまた、立派な人間になることよりも、いかに正気や健康を保っていられるかということを改めて大切にしてみるといいかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
欠落や弱さの共鳴場