おうし座
当たり前のことを当たり前に
健康で正常で渋い
今週のおうし座は、柳宗悦の「健康の美」という考えのごとし。あるいは、自分がもっとも「平常心」でいられる現場をみずから確保していこうとするような星回り。
民藝運動の父・柳宗悦は、日本全国をめぐって各地の手仕事に触れた経験をもとに『手仕事の国』という民藝案内書をまとめました。
そのなかで、彼は日本がいかにすばらしい手仕事の国であることへの認識を呼びかけましたが、それと同時に、「工藝の美しさはどんな性質のものでなければならないのか?」という問いを立てた上で、みずから次のように答えていました。
どんな性質の美しさも、「健康」ということ以上の強みを有つことは出来ません。なぜかくも「健康さ」が尊いのでしょうか。それは自然が欲している一番素直な正当な状態であるからと答えてよいでありましょう。
この世にどんな美があろうとも、結局「正常」の美が最後の美であることを知らねばなりません。凡ての美はいつかここを何か平凡なことのように取られるかも知れませんが、実はこれより深く高い境地はないのであります。
単純さと健全さとは極めて深い間柄にあります。日本で深い美の姿として、いつも讃えられる「渋さの美」は、要するに単純な姿を離れては存在しないのであります。
22日夜におうし座から数えて「体現すべき平凡さ」を意味する10番目のみずがめ座で迎える満月から始まっていく今週のあなたもまた、柳が言わんとした「健康美」ということを、どこでなら成立させられるか、改めて考えてみるといいでしょう。
「吟行」に出かける俳人のように
吟行とは、俳句の題材を求めて景色のいい場所へ出かけて、その場で何句かを作っていくこと。よく「文は人なり」とも言いますが、例えば山や湖などの大自然に触れてそれを言葉にする際にも、私たちは自然を通して人間を、そしてあくまで自分を通して心のなかに映しだされる景色を見ていきます。
つまり、ただ名所・旧跡のような‟いい素材”を得たからといって、いい俳句ができるとは限らないのです。そのためか、吟行で作られた作品でいいなと感じるものは、大抵どこかひっそりとしていたり、あるいは、余計なこわばりのない、あっさりとした印象のものが多いように思います。
それは、人の目にどう映るかはともかく、自分としては一番ウブな気持ちになって、そういうウブな気持ちのなかにあざやかにみえた風景を17文字で切り取っているからでしょう。
そして、そういう一句を自分の作品としていく上で一番大切なことは、「平凡さを恐れない」ということなのではないでしょうか。
今週のあなたもまた、そんな「吟行」に臨んでいるつもりで過ごしていきたいところです。
おうし座の今週のキーワード
奇をてらわないこと