おうし座
体感と予感の二重写し
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
魂の秘密としての「天道虫」
今週のおうし座は、「被弾史の一本一草天道虫」(伊丹三樹彦)という句のごとし。すなわち、自分のもとに飛び込んできた予感に呼応していこうとするような星回り。
掲句は昭和56年に作者が沖縄を訪れた際に詠んだもの。戦争が終わって30年以上が経過していましたが、まだいたるところにその生々しい傷跡は残っていたはずです。
「被弾史」という耳慣れない言葉も、銃弾によって多くの犠牲を払わされた沖縄の歴史を指したものであり、作者は島を覆う「一木一草」のひとつひとつが、そうした悲惨な歴史を担っていると感じたのかも知れません。
あるいは、消えることなく続く被弾史のさなかにおいても、同じように草や木は生え繁ってきたのだとも読むことができますが、おそらくその両方を言いたかったのでしょう。
そして、過去のつらい人間の歴史と、いつも変わらぬ大きさで人間のそばにあり続けてきた自然の営みに思いを馳せていると、一匹の「天道虫」が作者のもとに飛んできた。その小さな虫もまた、いや沖縄に今生きて在るすべてが、「被弾」という歳月の重みを背負っているのだ、と。そう作者は思ったに違いありません。
16日におうし座から数えて「手応え」を意味する7番目の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、背負うべきものの重みとそれを可能にしてくれるだけの活力とのバランスをみずからの意志で掴み取っていくべし。
不可能な何ものかに対しての予感
おそらく私たちが何か大事なことを解りかける時というのは、すべからく孤独な時なのではないでしょうか。つまり、安易な交わりで繊細な何かが立ち消えてしまうことがないような、怜悧な空気感が魂をいまにも縮めんとしているのをジッと肌で感じている時に初めて、目に見えない真の交わりへと開かれていくのだ、と。
このことについて、心理学者のユングは最晩年に出された『ユング自伝』において、次のように言及しています。
「われわれがなんらかの秘密を持ち、不可能な何ものかに対して予感を持つのは、大切なことである。それは、われわれの生活を、なにか非個人的な、霊的なものによって充たしてくれる。それを一度も経験したことのない人は、なにか大切なことを見逃している」
ユングからすれば、直接誰かからもらう滋養とは本質的に自分だけの魂の秘密にはなり得ないものであり、おそらく掲句における「天道虫」は、そうした秘密を持つということと表裏一体であったはず。今週のおうし座もまた、少しでもそうした境地に自分を立たせていきたいところです。
おうし座の今週のキーワード
なにか非個人的な、霊的なもの