おうし座
暗がりを通過する
死に様の追求
今週のおうし座は、「背中より水へ倒るる夏休み」(西山ゆりこ)という句のごとし。あるいは、現時点で絶対的と感じられたものをかりそめに置いていくような星回り。
背中側に水のかたまりがあることと、今が夏休みであることが、共にまったく疑われていないがゆえに成り立っている句。
逆に言えば、そこがプールや海で、タイミングが夏休みでなければ絶対にいけない句でもあるはず。そうした絶対的な時と場所の組み合わせがそろう時、人は安心して背中から倒れることができるのであって、それは死に様を求めるということとどこかで通じているように感じます。
そして、これぞという死に様を見つけられた人は、それだけで幸せでしょう。そう考えると、掲句はこの時点での作者の「辞世の句」として受けとっていくこともできます。
もちろん、また別の時と場所で絶対的なものを感じたときは、また辞世の句を詠めばいい。そうやって生き継いでいくのも、生き抜くためのアート(技)なのではないでしょうか。
8月8日におうし座から数えて「気の持ちよう」を意味する4番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、それくらいのつもりで辞世の句を詠んでみるといいかも知れません。
トンネルをくぐる
人間は「我」を消滅させまいとして、さまざまなことを行います。アンチエイジング美容にお金をかける人もいれば、銅像を建てる人もいる。本を遺す人もいるし、名を残すために善行を積んだり、逆に悪名を轟かす人もいますが、そろいもそろって消滅することを恐れている訳です。
死ぬということは決してそう厭なばかりではありませんが、自分の消滅ということはみんな嫌なんです。ただ、それが嫌というだけで生きていると、今度は自分が生きているうちにすべきものが見えなくなっていく。これもまた、緩慢な消滅と言うべきでしょう。
そう考えると、「老い」の自覚というの契機もまた、生きているうちにすべきことを明確にするために必ずくぐり抜けてていくべきトンネルのようなものなのかも知れません。すなわち、自分は現に疑いようもなく生きているという実感をはっきりと認識していくための通過儀礼であり、だとすれば、やはりその道は往くも還るもただひとりでゆくべき道なのだとも言えます。
今週のおうし座は、そういう意味でのトンネルをくぐっていくつもりで、何かしら身辺整理をしていくといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
緩慢な消滅に抗うべし