おうし座
嵐の前の静けさ
背負うべき日の丸
今週のおうし座は、「海風でよごれたしょぼたれた日の丸」のごとし。あるいは、「われわれ」の歪みを浮き彫りにしていこうとするような星回り。
みずからも捕虜になった経験をもつ作家の大岡昇平は、戦後になってテレビに映る日の丸を見て抱いた思いについて、次のように書いています。
自衛隊幹部なんかに成り上った元職業軍人が神聖な日の丸の下に、アメリカ風なお仕着せの兵隊の閲兵なんてやっている光景を見ると、胸くそが悪くなる。恥知らずにも程がある。捕虜収容所では国旗をつくるのは禁ぜられていた。帰還の日が来て、船へ乗るためタクロバンの沖へ筏でひかれて行ったら、われわれが乗るのは復員船になり下った「信濃丸」で、船尾に日の丸が下っていた。海風でよごれたしょぼたれた日の丸だった。われわれが山の中で持っていた日の丸より、もっときたない日の丸だった。私が愛する日の丸は、こういうよごれた日の丸で、「建国記念日復活促進国民大会」なんかでふり回されるおもちゃの日の丸なんか、クソ食えなのだ。(「白地に赤く」1957年)
世界は汚れている。しかしそのこと自体が問題なのではなく、そうした汚れが人びとのあいだであまりにたやすく忘却されてしまっていることが彼をなんとも言えないみじめな気持ちに誘ったのでしょう。
7月28日におうし座から数えて「レスポンシビリティ」を意味する10番目のみずがめ座に逆行中の木星が戻っていく今週のあなたもまた、ある種の欺瞞の構造を敏感に察知していくことなるでしょう。
水面下での動き
この宇宙では「現状維持」など本当は存在しません。一見落ち着いていて特に変化のないように見える静的な調和すらも、実際には絶えざる動的平衡のもとで成り立っているに過ぎないのであって、逆に言えば、「現状維持でいこう」という態度はすべからく自分の内部や周囲との動的平衡を破壊していかんとする宣戦布告に他ならないのです。
このことは、今のおうし座ならばよく分かるはず。まだ際立った人生の変化や、特別なイベントの最中にいる訳ではないにしても、水面下ではギリギリのところまで葛藤が高まっていたり、今にも決壊寸前のダムのように「その時」が迫っていること、そしていったん始まればそれがドラスティックな変化となるだろうこともうすうす感じとっているのではないでしょうか。
その意味で今週のおうし座は、自分を取り巻く目に見えない力の流れがどこへ向かっていこうとしているのか、頭で考えるのではなくできるだけ四股や肚で感じとってみてください。
おうし座の今週のキーワード
天災は忘れた頃にやってくる