おうし座
不合理ゆえに我ゆかん
閾値を超えやすいとき
今週のおうし座は、不気味の谷を越えていくよう。あるいは、普段過しているなにげない日常の「隠れた次元」を覗いていこうとするような星回り。
人ひとりが歩くのに最低限必要な道幅だけを確保して、その両側をとりさり、切り立った深い崖や谷をつくったらどうなるか。そういう道を「さあ行け」と言われても、ほとんどの人は足がすくんで動けなくなってしまうはず。これは一体なぜなのでしょうか。
このような谷を機械工学では「不気味の谷」と名づけましたが、最近は人型ロボットの様態があまりにも人間に近いときに違和感や嫌悪感を抱いてしまう現象として、より一般的に知られるようになってきました。
いずれにせよ、人間の知覚の中にはこうした「不気味の谷」がさまざまなかたちで潜んでいて、それは私たちの意識や精神、考え方や行動にまで、知らず知らずのうちに持ち抱えている物理的には不要の領域であり、その存在理由を合理的に説明のつかない「しっぽ」のようなものなのだとも言えます。
そして、こうした不気味の谷の問題は、例えばぎりぎりまでお酒を吞んでみたいとか、とことんハメを外してみたいとか、冒険や探検などで極限状態に身を置いてみたいとか、そういう自分の臨界値を越えた隠れた次元を覗いてみたいという衝動へと駆り立てます。
17日におうし座から数えて「許容範囲の確定」を意味する6番目のてんびん座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、これまで低く見積もっていた閾値を上回っていくような体験を自然と求めていくことになるかも知れません。
資本主義的な論理の枠とその向こう側
かつてマックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、神に召されたと思ってまじめに仕事を続ければ、商売繁盛がついてくるという「世俗内禁欲」ということに言及し、合理化された現代社会では人は職業人に徹する他はないのだという考えを展開しました。
立派な職業倫理だとは思います。しかし、それは時に過剰なまでに自分のアイデンティティーを職業と結びつけることで人を追いつめ、真面目な人に不必要な責任を負わせることで、死に追いやってしまうことがあります(他ならぬウェーバー自身もある時精神に異常をきたし、オカルトに走りました)。
職務をまっとうすることは大切ですし、立派な職業につくことは自尊心を高めてくれますが、それはあくまで社会という約束事の枠内、不気味の谷のこちら側に作られた仮の世界の話なのです。今週のおうし座は、むしろそれを超えたところに本当の自分があり、本当の世界があるのだということも、心のどこかに置いてみるといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
オカルトに走ったマックス・ウェーバー