おうし座
手繰り寄せて呼応する
手の動きから始まる
今週のおうし座は、「鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし」(三橋鷹女)という句のごとし。あるいは、より良い人間関係の在り様を求めて、自身に檄を入れていくような星回り。
「鞦韆(しゅうせん)」とは公園などにあるブランコのことで、他に「ふらここ」「ゆさはり」「半仙戯」といった別称がありますが、ここではブランコを前に漕いでゆく行為が、激しく愛を求める心理や動作などと重ねられています。
ブランコでは、ある程度までは主体的な手の動きによって手ごたえを得ていくことができますが、本当の意味で勢いをつけていくには手の動きに腰と足とを連動させて、ブランコ全体に遠心力をつけて前後させていくのでなければ継続は難しくなります。
さて、それは愛情の紐づいた人間関係ではどうなのでしょうか。誰かを手でたぐり寄せて「奪ふ」ところまでは良いとして、その後はどうするんだと。
でも、そんな無粋なツッコミはともかく、「奪ふ」ことさえできずに相手から声をかけられるのを永遠に待ち続けて地蔵のように固まっている人が世の中ほとんどでしょうから、作者の叱咤もごもっともなのでしょうね。
今週のあなたもまた、ブランコでも漕ぐかのように、まずは愛を自分の手でたぐり寄せていくところから始めてみてはいかがでしょうか。
引用する私たち
引用という行為は、「奪ふ」ということを別の形に変換したものと言えるかもしれません。
そもそも厳密な意味でのオリジナルなんてものは、そこに集合的無意識が介在する限り存在しません。
今日において何かしら心をこめてクリエーションしていくということは、何らかの元型的なパターンや先行モデルを換骨奪胎して転調したり、表現や視点を再配列してずらしていくという営みに他ならないでしょう。
「ひさかたの天知(あめし)らしぬる君ゆえに日月(ひつき)も知らに恋ひ渡るかも」
過去、既に亡くなった高市皇子(たけちのみこ)を現在の柿本人麻呂がしのぶこの歌などは、どこか『君の名は。』や『時をかける少女』などの作品世界を彷彿とさせるものがありますし、タイムリープものであればオルフェウス神話、はては匿名の民間伝承などにまで遡ることができるかもしれない。
そうした先人の遺してくれた偉大なパターンを積極的に引用し、みずからに取り入れていくこともまた愛情表現なのだということを、今週は胸に刻んでおきましょう。
今週のキーワード
ぶらんこのリズム