おうし座
接近と欲望
イエスの起こした奇蹟とは何か
今週のおうし座は、イエスの試みた接近のごとし。あるいは、一周まわって、所有を超えた愛を実践していくような星回り。
ナザレのイエスは、当時のユダヤ教社会の改革を志した活動家の一人でした。そして、その活動の核心にあったものは、何よりも彼特有の仕方での人との「関わり」にあったのではないでしょうか。
彼はこの関わりを「愛」と呼び、関わりによって成立する共同性を「神の国」と呼称しました。
例えば、イエスは足の萎えた男に、悪霊に憑かれていた人に、出血を患っていた女性に、「行きなさい」と声をかけた。この言葉に促されて、イエスに接近された人々は歩み始める。
「そして、中風の人に、「わたしはあなたに言う。起き上がり、床を担いで家に行きなさい」と言われた。その人はすぐさま皆の前で立ち上がり、寝ていた台を取りあげ、神を賛美しながら家に帰って行った。」(『ルカ福音書』5・24-25)
これはいわゆるイエスによる癒しの奇蹟に関する聖書の記述ですが、興味深いのはイエスが、癒された人物に彼と共に留まることを許さず、移動を促す点。
つまり、彼は接近しつつも、誰かをけっして「所有」しようとはしません。ただ、自らの「近づき」を経験した者の情動が直接突き動かされるままにしようとするのみなんです。
そして、このように「近づく―情動―歩み出す」という連鎖を、物理的・空間的な次元で引き起こしていくことは、今の、そして2019年のおうし座のあなたのテーマともなっていくはず。
それは古代的な言い方をすれば、「愛の実践」に他ならないのです。
共有と癒し
人は誰かにむかって語ることで初めて自分の苦しみや悲しみに気づくものですし、そうした気付きは語った相手のリアクションによって強化され、結果的に人はそこで深く癒されていきます。
さながら植物の種が大地にまかれ、養分を吸収することでやがて花を咲かせ実をつけていくように、悲しみや苦しみの種も周囲から適切な養分をもらえなければ、未消化のままずっと心の内に残ってしまうんです。
今週のあなたは、これまでかすかな感覚や記憶の断片に過ぎなかったものが、語りを通して大きくて強いひとつの感情へと練り上げられていったり、何とも言えない癒しがもたらされる、といったことも起きてきそうです。
今週のキーワード
神の国は地上にある