おうし座
あるべきリズムを取り戻す
生命の交替
今週のおうし座は、小津安二郎の『東京物語』のごとし。あるいは、自分の中の古い生命が死んで、その代わりに新しい生命が脈動し始めていくような星回り。
1953年に公開された小津監督の『東京物語』は、家族崩壊の物語であると同時に、生命の交替のドラマでもありました。
それを象徴しているのが、東京で医者になっている長男たちに呼ばれて上京し、しかしいまは多忙な都会人となってしまった長男やその妻、長女らにもなじめず、厄介払いされるように熱海で一泊して、帰ってすぐに死ぬ老妻と残された老夫のありようでしょう。
もう60年以上前の映画ではありますが、ひるがえって現代に目を戻してみると、そこでは自分の生にこだわって死から目を逸らし、古い生命が新しい生命に譲り、新しい生命が古い生命を労わるということが、もっと露骨になってしまったように感じます。
これは言ってみれば、あるべき生命の交替のリズムがすっかり狂ってしまった、ということなのかもしれません。
今週のあなたはどこかで、そうした「あるべき生命の交替のリズム」ということを取り戻そうという動きが出てくるように思います。
歴史からリズムへ
インドの歴史を特徴づけているのは、原住民たちが外部からの侵入者を駆逐する代わりに同化してしまうということを繰り返している点にあるように思いますが、そうしたインド的精神性の結晶とも言うべきタゴールの遺した『サーダナ』(「生の実現」の意)には、次のような箇所があります。
「われわれは至るところで生と死との戯れ――古いものを新しいものに変える働き――を見ている」
不調や衰え、落ちぶれや凋落というものは、つかの間のあいだ影を落とすだけであり、太陽のごとく世界の心臓の中心たる真理はいつまでも新鮮であり若々しさが保たれているのです。
「生命は自分の行動を妨げようとする老化を嫌う」
この場合の老化とは、肉体における表面的な表れのことではなくて、太陽を雲が覆い隠すように、自分自身が生命力の無限なる海へ開かれているということに目を背けさせる一切のもののことを指しています。
「生命が詩と同じように、たえずリズムを持つのは、厳格な規則によって沈黙させられるためではなく、自己の調和の内面的な自由をたえず表現するためである」
思うに、人生の歩みを歴史としてではなく生命のリズムの実現として見ていくとき、やはりこうした捉え方に近づいていくのではないでしょうか。
今週のキーワード
物語でもドラマでも歴史でもなく、リズムを生きるということ