さそり座
闇の中で取り戻す
今週のさそり座:闇遊び
今週のさそり座は、闇を深める闇遊び。あるいは、本来の自分を取り戻すための前進とそれに伴う展開がもたらされていくような星回り。
岡崎京子の『Blue Blue Blue』に、
「匂いはいつもあやうい。ことばではない何か。何かが反応してしまう。匂い。夏の。夜の。アスファルトの。あなたの。匂い。」
という独白が出てきます。これがものすごく明るい蛍光灯の下で吐かれたものだったなら、拍子抜けしていたことと思います。
まとっている闇が深ければ深いほど、その中で立ちのぼってくる感覚や印象は鮮烈になっていく。かつての日本人は体感し、楽しんでいました。
例えば集まって月の出を待つ「月待」や、怪談を語りあう「百物語」、などなど、さまざまな機会を持っていたのです。
つまり、ふつうの日にはわが家の闇に身を浸して眠りにつき、特別な夜には闇に親しみ、遊び、夜更かしや徹夜をしていたのだそうです。そこにはもちろん光もありましたが、それを包む圧倒的な闇への感覚を、むしろ際立たせるためのささやかな光だったのです。
今週は、いろんな意味で「灯り」のスイッチをOFFにしていくことを心がけていくといいでしょう。
善光寺のお話
戒壇巡りで有名な長野の善光寺は昼に訪れることのできる闇の名所ですが、かつては夜に訪れるべき闇の名所でした。江戸時代の見聞記によれば、善光寺で通夜をすると、亡くなった親しい人に逢えると言われていたのだそうです。
それゆえ、人の顔もはっきり見えないほどの暗い本堂で、通夜をする人が絶えませんでした。しかも夜が更けるにつれて人がどんどん集まって来て、午前2時頃の如来開帳のときには、広い本堂がいっぱいになったのだとか。
あるいは、闇の中で徹夜で願い事をすることで疲れ果て、そこで襲われた睡魔の夢うつつのはざまだからこそ、亡者に逢うという超常現象が起き得たのかも知れません。
今週は自分にとっての祈願をひとつ、考えてみるのもいいかもしれません。
今週のキーワード
『Blue Blue Blue』