さそり座
暗い穴にはいる
隠者のごとく
今週のさそり座は、「土のなかのくらさ」という言葉のごとし。あるいは、やがて芽を吹く自身の奥底にはらまれた兆しを予見していこうとするような星回り。
詩人・牟礼慶子の「見えない季節」という詩に、「土のなかのくらさ」という大変印象的なフレーズが出てきます。
できるなら/日々のくらさを/土のなかのくらさに
似せてはいけないでしょうか
地上は今/ひどく形而上学的な季節
花も紅葉もぬぎすてた/風景の枯淡をよしとする思想もありますが
ともあれ/くらい土の中では/やがて来る華麗な祝祭のために
数かぎりないものたちが生きているのです
その上人間の知恵は/触れればくずれるチューリップの青い芽を
まだ見えないうちにさえ/春だとも未来だともよぶことができるのです
冬の大地は、一見のっぺらぼうで、何もしていないように見えますが、春になるといっせいに芽が出て、撒いたわけでもないものまで一緒になって、草木がぐんぐん生えてきます。そこに至るまでのあいだ、暗い土のなかでは一体どんなドラマが進行しているのか。
自然だけでなく人間の暗さが孕んでいる未来にも、そっと手を添えてくれるような牟礼の詩行に触れていると、改めて地下世界にひしめいている予兆に目が開かれていくようですが、1月7日にさそり座から数えて「探求」を意味する9番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、さながら隠者のごとく「日々のくらさ」を「土のなかのくらさ」へと近づけてみるといいでしょう。
穴観ふたつ
どんな人のこころの底も、覗いてみればぽっかりと穴が空いている。そんなことを言っていた人がいましたが、穴に落ちた人物として世界的に最も有名になったのは『不思議の国のアリス』でしょう。
一方で、日本のおとぎ話にも『おむすびころりん』という、穴に落ちてしまうお爺さんのお話があります。ただし、どうも両者には穴に落ちた者の心持ちの部分で、明確な違いがあるようです。
アリスは少女ということもあってか、穴に落ちたこと自体にすっかり気が動転してしまっているというか、どこか本能的に「ヤバいぞ」と思っている節があるのに対して、お爺さんの方はと言うと、のんきにねずみ達のついたお餅やご馳走を食べるなど、なんというか、この世のあれこれをほとんど気にかけてない様子なんです。ひるがえって、穴に落ちたのがもしあなたならば一体どうなっているでしょうか?
「穴」という言葉は「墓穴」にも結びつきますが、今週のさそり座はかりにそんな状況に陥っても開き直って状況を遊んでしまえるかどうかが問われていくように思います。
さそり座の今週のキーワード
やがて来る華麗な祝祭のために