さそり座
自分が生きた後の世界
絶滅事始め
今週のさそり座は、滅した後の世界への備え。あるいは、非個人的成長にエネルギーを贈与していこうとするような星回り。
生物の歴史をこれまで誕生した生物種のうちどれだけの割合が絶滅しているか、という観点から振り返ってみると、じつにその99.9%が絶滅しているのだとか。
そして、現生の人類も生物学的には今後100万年続くことは考えにくく、今後10万年続くかどうかも分からないそうです。ウイルス研究の第一人者である宮沢孝幸は、すでに20万年続いた現生人類が別の新型人類への入れ替わっていくスイッチは、すでにもう入っているのかも知れないと述べています(『京大おどろきのウイルス学講義』)。
人類が、そしてみずからもまた近く絶滅してしまうかも知れないという仮定を、まじめに受け止めるとき、そこでは「後に何を残すか」ということのみが問われていきます。現生人類は、そしてあなた自身は、あなたが滅んだあとの世界ないし地球環境に、何を残すべきであり、現にどんなものを残しつつあるのでしょうか。
11月5日に自分自身の星座であるさそり座において新月を迎えていく今週のあなたもまた、大袈裟な話ではなく、先々のことを考えての備えや後始末について考え、動いていくことがテーマとなっていくでしょう。
行方の確認
現在の渋谷ヒカリエがある場所で、かつて最晩年の星の民俗学者・野尻抱影は「星に感じる畏怖」と題する講演を行い、その締めくくりに自分が死んだらオリオン座の右はじ、すなわち亡き妻が眠る宇宙霊園に葬られたいと語っていたといいます。ただし、これは野尻お得意の冗談でもあり、その頃よく口にしていた‟ネタ”でした。
オリオンのね、長方形の四つ角のところ、…そこにねえ、神話に出るアマゾン女兵が……得意の盾を持って槍を持って立っている。これがぼくの“オリオン霊園”の番人ですよ。(1977年2月5日放送NHKテレビの対談より)
そして本当に、放送された年の秋の日の早暁に野尻は逝きました。正確には、1977年10月30日午前2時45分頃。弟子が確認すると、ちょうどオリオン座が南中し、子午線上にはオリオン座γ星ベラトリックス(ラテン語で「女戦士」の意味)が昇っていたという。自己暗示ともとれた野尻の企ては、たしかに成就していたのです。
今週のさそり座は、自分の未来について想いを馳せるにあたり、陳腐で使い古された方式にただ任せるのではなく、大切なもの、愛すべきものへの洗練された崇敬を示すことができるかどうかが、ひとつの焦点となっていくはず。
さそり座の今週のキーワード
自分に魔法をかけておく