さそり座
玩具のチャチャチャ
こちらは9月27日週の占いです。10月4日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
完成された不思議世界
今週のさそり座は、「巣をあるく蜂のあしおと秋の昼」(宇佐美魚目)という句のごとし。あるいは、日常世界にもうひとつの別世界を対置させていくような星回り。
巣をあるいている蜂の足音が響き渡っている、という謎かけのような一句。「あるく」と「あしあと」が響きあうことで、かなりの大音量に感じられるのですが、「蜂」も一匹ではなくかなりの数の複数なのではないでしょうか。
ただそれも、「秋の昼」まで読み下してみると、それほどに森に訪れた秋の昼の静けさが際立っているということなのかと、すこしホッとする。秋の昼の清澄なひかりと、十分に乾燥した空気とが、静寂に包まれた光景を想像してみると、なんだかそれ自体がひとつの完成された不思議世界に思えてきます。
人間のいない世界。もしくは人間の代わりに、進化した蜂が世界の主として黙々と仕事をしているもうひとつの世界。どうもそちらの世界の方がホッとしてしまうのは、総裁選に関する一連のニュースを見過ぎたせいなのか、長期にわたるステイホームへの反動か、そもそもの本質的な直感なのか。
いずれにせよ、9月29日にさそり座から数えて「想像の果て」を意味する9番目のかに座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、多少なりと目の前の世界や現実へのコミットを解除して世界の多様性を取り戻していきたいところです。
ルソーの『学問芸術論』
それまでほとんど無名だったのルソーは、38歳の時に「学問と芸術は習俗の純化に貢献したか否か」という題目に対する懸賞論文において、啓蒙主義全盛の社会情勢下にも関わらず、大胆にも学問や芸術こそ人々を退廃させたのだと否定的な論陣を張ることで、一躍有名になりました。
彼はそこで学問の進歩こそが傲慢な精神や贅沢の蔓延をもたらし、18世紀半ば当時の学問芸術を単なる貴族の自己満足でしかないと、厳しく糾弾したのです。
とはいえ、彼はそこですべての学問を否定した訳ではなく、知識の教育ではなく徳の教育こそが必要であり、そのためにはなくても困らない玩具のような「貴族の学問」をいったん捨てて初めて、「誠実や歓待や正義」などの本当に必要な徳の大切さが身に沁みてくるのであり、それを促す限りにおいて学問や芸術は意味を持つと考えました。
確かに、学問を身につけたり、何かしら‟専門家”然としてくると、自然やこの世界の在り様に対する畏敬の念を失っていくというケースは現代でも珍しくありません。むしろ、「自然に還り良心の声を聴くべきである」というルソーの主張は、現代においてその重要性が増しているようにも思えます。
今週のさそり座もまた、自分の無意識的な‟偏り”をただしたり、より自分本来の自然に近い状態へと戻っていこうとする作用が働いていきやすいでしょう。
今週のキーワード
まずは玩具を捨てること