さそり座
夕闇はすべてを溶かしこむ
ひぐらし二匹
今週のさそり座は、「蜩(ひぐらし)のなき代わりしははるかかな」(中村草田男)という句のごとし。あるいは、ひとつの終わりをやさしく包んでいくような星回り。
初秋のよく晴れた日の夕暮れに、森でひぐらしが鳴き継いでいるのでしょう。よく鳴いていたひぐらしが鳴き終わると、それを察知して、また別のひぐらしが鳴き始める。そのひぐらしは、かなり遠くの方で鳴いているというのです。
さながら、沈黙してしまうことを恐れるように。もしかしたら、ひぐらしにとって森が完全に沈黙のなかに没してしまうことは、ひぐらし自体の死滅であり、秋の深まりと結びついているのかも知れません。
彼らは本能的にそれを感じ取って、誰かの鳴き終わりを察知すると、自身に残された力を振り絞り、まだ死んでいない、自分たちは、夏と秋が交差する繊細で特別なひとときは、まだ生きているのだと示してくれている。と、そんな風に解釈することもできるのではないでしょうか。
8月30日にさそり座から数えて「大いなる息継ぎ」を意味する8番目のふたご座で形成される下弦の月から始まる今週のあなたもまた、はるかな距離を隔てたひぐらしの交感のようなやり取りのなかで、自身を取り巻く流れが変わりつつあることを実感していくはず。
縁をまあるくする
人との断ちがたい繋がりを表わす‟縁”という字は、‟円”という字とも同じ音ですが、これは単なる偶然以上の意味があるのではないでしょうか。
例えば、丸みを帯びたカタチをしているものには、周囲に流れている気を円の中心に向かわせる力がありますが、実際に住む人の集まりやすいリビングに丸テーブルがある家族は、普段から家族仲がよかったり、いざという時の結束が固かったりする傾向があります。
そしてまさに今週のさそり座のテーマもまた、特に切迫していたり緊張感のある人間関係の中で、まあるく円を描くような動きができるかどうか、あるいは、そうした‟円の精神”を誰かとの繋がりに見出していけるかどうかにあるのだと言えます。
ただ、私たち人間というのは皆誰しもが、心の奥底に複雑な凹凸をもっているものであり、世間や周囲がいくらダメだと言っても、自分の凹にどうしたってハマる凸であれば、それは円なのです。
人との繋がりに丸みが出てくると、そこには体温が宿ります。そして、そうした温もりこそが人を正しい道に運んでくれる大いなる運気を育てる。今週はぜひそんなことを頭の隅に置きつつ過ごしてみて下さい。
さそり座の今週のキーワード
凹と凸