さそり座
あり得ないことこそがあり得る
詩的リアリティの感じ方
今週のさそり座は、「ひるがほに電流かよひゐはせぬか」(三橋鷹女)という句のごとし。あるいは、個人的であると同時に普遍的な思いに触れていくような星回り。
「昼顔(ひるがお)」の花は朝顔に似て、やや小さな淡紅色(たんこうしょく)で、夏の日盛りに咲きます。つるは道端や家の壁など何にでも絡みつき、かなり高いところまで登っていくだけの非常に強い生命力を持ち、花もつるも見る人に強い印象を与えます。
掲句では、昼顔にそういう強い生命力を感じとった作者が、つるから花へと電流が通っているに違いないと直感したのです。
彼女の抱いたこの直感は、彼女の資質からくる個人的なものであったと同時に、表現史上に普遍的な意義を刻んだことにより、この句に出会って以降、多くの人が昼顔を見ると電流が通っているのを感じざるを得なくなったのではないでしょうか。
この句の「昼顔」には、それだけの衝撃的で、詩的なリアリティがあったし、それはこれからも変わることはないはずです。
10日にさそり座から数えて「インスピレーション」を意味する9番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、強い生命力の持ち主に触発されて解き放たれていくことがあるかも知れません。
正しい読み筋を持つということ
例えば、2000年代に起きた史上最大の企業スキャンダルであるエンロン事件は、70年代のウォーターゲート事件と比較すると、明らかに違いがあります。それは後者の場合、スキャンダルの種は隠されていて、記者が危ない橋をわたって関係組織内部に入り込み、情報を物理的に掘り出すことで初めて明らかになったのに対し、前者の場合は隠された情報はなくて、はじめからすべて公開されていたという点です。
エンロン事件をすっぱ抜いた記者は、公開されてはいたがパッと見ただけでは分類すら不明瞭で何を示しているのかも分からないデータを地道に読み解き、つなぎ合わせていくことで粉飾決済の実相を浮かび上がらせたのです。
この違いの意味するところは、あらゆる情報がデジタル空間においてアーカイブ化されるようになった現代においては、<答え>はそれとしてきわめて具体的に目の前にあるにも関わらず、私たちはそれを理解するための<正しい問い>を見出すことができないがゆえに、多くの歪んだ状況を認識すらできないでいるのだ、ということ。
その意味で今週のさそり座もまた、どれだけ自分の置かれた事態を客観的に認識できるかが問われていくことになるでしょう。
さそり座の今週のキーワード
インスピレーションとは、これまで見えていたのに見れなかったものが見えてくること