さそり座
ひとつの成熟
こちらは6月14日週の占いです。6月21日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
人間離れ
今週のさそり座は、鴨長明の『無名抄』の一節のごとし。あるいは、自分の世界を構築していくために必要なプロセスを踏んでいくような星回り。
鴨長明の歌論書である『無名抄』に「言葉にも艶きはまりぬれば、ただ徳はおのづからそなはる(言葉の艶なるおもむきがきわまると、徳、つまりは力が自然と満ちてくる)」という一節があります。
この箇所について、作家の堀田善衛はさらに一つの連想を浮かべていて、それは次のような一幕なのです。
あるときに画家のドガが詩人マラルメに向かって、詩を一つ書いてみたいのだが、想はあるんだが、どうもうまく書けない、と言ったとき、言下にマラルメが、詩はことばで書くものであって観念で書くものではない、と
これはつまり、書かれている内容の具体性ないし直接性が喪失されて初めてそれは詩になるのだ、ということです。フィクションというのは、ただ自分の気持ちのままに言葉を綴っているうちはとても構築できない。喪ってはじめて得られる世界なのだ、と長明は考えていたのではないでしょうか。
18日にさそり座から数えて「縁切り」を意味する11番目のおとめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、なにか一つを喪って別の何かを得ていくという取引を意図的に行っていくことになるかも知れません。
雲を取り除く
たとえ外で雨が降っていようが、いまこれを読んでいるのがコンクリートに囲まれたマンションの一室だろうが、できれば今週は早朝に一度は外へ出て30秒でもいいので空を見上げてみることをお勧めします。
雲は知っていない、
なぜ、この方向に
このスピードで動いていくのかを
知らない。
しかし、空はすべての雲の秩序を把握している。
君達にもそのことがわかるだろう。
地平線の向こう側が見える程の
高みに立った時には。
(リチャード・バック、『イリュージョン』)
空を見上げながら、ゆったりとした気分で心の中から「雲」を取り除いてみる。すると、雲なんて最初からなかったかのように青空が広がる。そんなとき、あなたは雲の向こう側に広がる未来をこれまでにない鮮やかさで捉えていくことができるはずです。
さそり座の今週のキーワード
さっぱりとした諦めにいたる