さそり座
いのちのリズムを刻みなおす
太陽(生命力)を召喚する
今週のさそり座の星回りは、繰り返されるリズミカルな衝撃音のごとし。あるいは、時間の<外>へ飛び出していくきっかけを、リズムの中にこそ見出していくこと。
ロラン・バルトは『第三の意味―映像と演劇と音楽と』のなかで、しるしを刻まれた有徴のものと無徴のものの絶えざる後退を運動(いま)として持続させることこそが、人間性の根本なのだとして次のように述べていました。
「文字が発明されるずっと以前に、さらには、洞窟画が描かれるずっと以前に、おそらく根本的に人間と動物とを区別する何事かが生じたのだ。それはリズムを意図的に繰り返すことである。……砕石の刻み目や槌で打たれて多面体化した球が証明するように、人間の作業の特徴は、まさに長く繰り返されるリズミカルな衝撃音なのである」
眠りと目覚め、緊張と弛緩、滑りと遅れ、流動と制御、持続と宙づり――。私たちはそうした繰り返されるリズムと一体化していくなかで、それに受動的に運ばれると同時に、それを対象化して能動的に拍節を刻むのであって、その意味でリズムとは、時間の内部にあって時間を超える契機であり、時間の<外>へ飛び出していくきっかけを、人はリズムの中にこそ見出していくのではないでしょうか。
6月2日にさそり座から数えて「心臓の働き」を意味する5番目のうお座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、意味の身ぶるいとしてのリズムを自分なりに刻んでいきたいところです。
滅びの美学
仏教には観想というイメージトレーニングの瞑想修行の伝統があり、その中に人体が死後に膨張し、腐乱して蛆がたかり、野良犬やカラスに食い荒らされて、やがて白骨となるまでのプロセスを九段階に分けて観想することで、煩悩を防ぐというものがあります。
朽ちてゆく亡骸には、凄惨でありながらもどこか人を魅了する美しさがありますが、それは見る者がそうした死のプロセスに、自然へ還り万物循環をめぐらしていく上での、滅びの美学を重ねるからでしょう。
心臓を鼓動させ、エネルギーを燃焼させていくことも、そうした万物循環の中での一フェーズであり、やがてはぐるりと巡って、あなたもまた誰かの燃料にならんと朽ちていくのです。
冒頭の「繰り返されるリズム」ということも、ある意味でそうした循環のサイクルを受け入れ、その中に入っていくための助走をつけるということであり、そこではあなたがどんな美学を持っているのか問われていくでしょう。
もしそういう時を迎えた際に不完全燃焼することなくよく燃えるように、悔いなく、今を完全燃焼させていくことが、せめてもの人や世界へのやさしさなのかも知れません。
今週のキーワード
トランスに入る