さそり座
大元から始める
しるしをつける
今週のさそり座は、たったひとつの小さな赤い「×」のごとし。あるいは、文様がデザインに、文字が言葉になっていく過程をみずから再現していこうとするような星回り。
人間は他の動物と比べても圧倒的に力も弱く、また体を覆う体毛もほとんどない、非常に脆くはかない存在ですが、そんな人間が外的から身を守るために必要としたのが“人工の皮膚”であり文身、すなわち入れ墨/刺青でした。
日本では「アヤ」と呼ばれ、その最も単純な原型が「×」で、線条が斜めに交錯しているさまを指しました。原始、いくつかの部族社会では生まれた赤ん坊の額や胸に呪力としての×をしるし、それはやがて増殖して綾となり、文様となり、姿を変えて文字となっていきました。
「×」が潜む文字には「産」や「彦」や「顔」があり、「産」はムスと読んで、額に×をつけた魂が充実することをムスビと言いました。そしてやがて無事に成長すれば、男をムスコと言い、女をムスメと言い、それらが一緒になることを「結ばれる」と言ったのです。
そうして「文」が成長するとそれは「文化」となり、そこでアヤは運動会で行われる綱引きや、冠婚葬祭時に使われる水引、相撲の横綱の土俵入りなどへと転じてきたのではないでしょうか。
21日深夜にさそり座から数えて「宗教」を意味する9番目のかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの手でひとつの文化の大元を作っていくことがテーマとなっていきそうです。
依代を立てる
文化の大元には必ずある種の呪術的コードが働いている訳ですが、例えば、祭りの際に神が降臨するための柱を立て、その先端に祭りに縁のあるものを取り付け、神への目印としたものを民俗学の言葉で「依代(よりしろ)」ないし「標山(しめやま)」と言います。
依代として使われるものには岩石や宝石、貝、野獣の牙、人形などさまざまなものがありますが、やはり樹木が圧倒的に多く、海辺ではタブの木、山地では榊(サカキ)、椿(ツバキ)の木など、いずれも東アジア大陸につながる照葉樹が使われてきました。つまり、こうした風習は農耕文化圏に特有の、稔りや豊かさを呼び込むための祭礼だった訳です。
これは「この地で自分たちは豊かさを得るのだ」という決意を固めていくための儀式でもあり、そうすることで言葉だけでなく実際的な行動レベルでそれを実行していくことを自分たち自身に促していったのでしょう。
今週のさそり座もまた、そうした決意のしるしとしての依代を自分の生きる世界に立てていくことがテーマとなっていきそうです。
今週のキーワード
何を呼び込むべきか?