さそり座
汝自身を知るために
※2021年3月1日~3月7日の週間占いは、公開を延期とさせていただきます。(2021年2月28日追記)
先に相手に人格を与えること
今週のさそり座は、シベリアの狩猟民、ユカギールのハンターにとっての獲物のごとし。あるいは、違いをこえて結びついていこうとするような星回り。
文化人類学者のレーン・ウィラースレフの『ソウル・ハンターズ』に出てくるユカギールのハンターは、敵であり獲物である大鹿エルクを「エルクさん」とか「エルクちゃん」、いやむしろ敬愛を込めて「エルク姉ちゃん」として扱い、彼らを人間存在であると捉えているのだとか。
そして狩りに出る前には、人間との接触を避け禊ぎをして人間臭を消し、ウォッカや煙草などを火の中に投げてエルクの支配霊を誘惑し、夢の中でみずからエルクに扮して「エルク姉ちゃん」を訪ね、エルク姉ちゃんと枕を共にする。そしていざ狩りの際には、エルクと人間の種族間の差異はすっかりぼやけ、一体化の危険を乗り越えて、最後はエルクを撃ち殺すのだという。
ここで興味深いのは、ウィラースレフが狩りの駆け引きの場面で、ハンターが何者であるのかは、ハンター自身のうちにではなくエルクのうちに見出されるのだと書いていること。
つまり、相手にこそ先に人格が与えられていると直観することこそがハンティングの命であり、ハンターがハンターでいられる根本なのです。
27日にさそり座から数えて「開かれた連帯」を意味する11番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が何者であるかということをそうしたアニミスティックな感性のなかで改めて捉えなおしていくべし。
自分自身がメディアになること
シャーマンの伝統においても、決定的瞬間を「待つ」ということが大切にされてきました。例えば、古代ギリシャやアルタイ、日本でも、祭祀において「鈴」が大切にされてきましたが、ロシアのシャーマンは腰に鈴をたくさんつけて、音がすることで神さまが来たことを分かるようにしていました。そうして「おとずれ」を待っていた訳です。
そして、やはりそれに備えて自分の感覚を研ぎ澄まし、気持ちや思考もいつ何かが訪れてもいいように、つねに臨界値にしていきました。
界に臨んで、いろいろなものがやって来るのを、熟練のハンターのようにひたすら待つことに集中していく。これは書いてしまえば簡単ですが、自分自身もメディアであることを忘れてしまった現代人にとってはかなり難しいことかも知れません。
ただ、中世くらいまでの日本人であれば誰でもできたことです。街と街との境界線で、ビーンビーンと櫛(くし)をならして自分を一つの受信機にし、あるいは己を無にして、耳を研ぎ澄ましていきましょう。
今週のキーワード
「言霊の八十の衢に夕占問ふ占正に告る妹はあひ寄らむ」柿本人麻呂