さそり座
春と死者
春はまず心に訪れる
今週のさそり座は、「いつせいに春の星座となりにけり」(黒田杏子)という句のごとし。あるいは、心のなかの景色をそっくり入れ替えていくような星回り。
96歳で大往生したある女性への追悼句。「立春」から暦の上では春と言っても、以前として身に沁みて感じる寒さは厳しいまま。けれど、春はまず心に訪れるもの。
今日から春と思えば空の色も、風の冷たさもどこか春めいて感じられてくるはず。この句にある通り、昨日までの冬の星座も、心ひとつで「いっせいに」春の星座に変わっていくのです。
にぎやかな冬の星座と比べると大人しいものの、春の夜空には北斗七星からうしかい座のアルクトゥールス、そしておとめ座のスピカを結んだ「春の大曲線」と呼ばれる星の目印が見え、おだやかな季節の訪れを告げてくれる。
おそらく、そのなだらかなカーブを夜空に見出しすことができたとき、心象風景における春の訪れは、新たな死者の受け入れと重なってより一層決定的なものになっていくのではないでしょうか。
2月3日23時59分に立春を迎えていく(太陽が水瓶座15度へ移行)今週のさそり座のあなたもまた、心から去りゆく季節をしかと見送って、新たな季節を迎え入れていくべし。
ずっとそこにあった自然に気付く
逆に言えば、今週のさそり座は、なにか未知の領域から未来の出会いや新規の興奮材料を探そうとするのは避けること。
むしろごくふつうの物事や、ずっとそこにあった自然のような、ありふれた日常の中にこそ、インスピレーションや情熱の源泉は潜んでいるのだということを意識する必要があるように思います。
あるいは、孤独や過去をしっかりとくぐっていくことを通じて、こころを開ける相手やそんな相手に向き合う喜びは見出されるのだとも言えるでしょう。
そして、そうしたプロセスを経てこそ、あなたは「おかげさま」とか「かたじけなさ」、「ありがたさ」という感覚を改めて思い出していくことができるはず。
今週のキーワード
死者と共に生きる