さそり座
口ずさむ言葉は愛
「ジャズは冬」
今週のさそり座は、「かほぎゅつと集めて吹きぬジャズは冬」(小川楓子)という句のごとし。あるいは、宝物のような小さな言葉や思いを大切に繰り返していくような星回り。
言われてみればそうだった、と思わずハッとする。そういう瞬間を力まず自然に迎えられること。
そこが俳句鑑賞と占い体験という異なる円が重なりあっていく隣接点と言えるが、掲句はまさにそんな一句。
寒いなあと肩と顔を同時に縮めながら言うときの表情や仕草は、確かにジャズのサックス奏者が浮かべるここぞという場面の決め顔にそっくり。
それをもって「ジャズは冬」と結論づけてしまうあたりも、宇宙の真理を悟ってしまった気分になってる子供みたいでなんだか笑ってしまう。
きっとこれから寒くて顔をぎゅっとする度に、ジャズは冬と満足げに言った誰かさんのことを思い出すんじゃないかな。そうあれたら幸せだね。
21日にさそり座から数えて「贈り物の受け渡し」を意味する7番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、「せえの」で呼吸をあわせて誰かと「ジャズは冬」と口に出してみるといいだろう。
少しでも生きやすくするために
それは即ち、感情の「ハビトゥス」を培っていくことに他なりません。ハビトゥスとは、態度、外観、装い、様子、性質などを意味するラテン語で、端的に「習慣」と訳されることが多い言葉ですが、もともとの意味に忠実に定義すれば「おのれを持する能力」のこと。
そして私たちが抱く感情もまた「ハビトゥス」の一つであり、それこそが今週のさそり座にとって大切なテーマとなってくるでしょう。
例えば、愛情や優しさ、義理人情といったものは、ともすれば本人の先天的な性質に由来するものと考えられがちですが、まだ愛情にもならない思いの萌芽が何度も経験されることで強化されたり、それを発揮しやすい環境や相手を得て、練習ないし反復されていくことで初めて身についていくのだと言えます。
ほんの些細な愛情や優しさを前にした時、「愛が足りない」と不満に思ったり相手を非難してしまう人もいれば、それを拾い集めて「おのれを持する」ことで満ち足りる人もいるのは、どれだけの反復と練習を積み重ねてきたかの違いなのです。
おのれを持することは決して簡単ではありません。しかし、今のあなたならばそれができるはず。未来の苦しみを減らすためにも、些細な遊び心を大切にしていきましょう。
今週のキーワード
「おのれを持する」