さそり座
慰めと本能
見えなくても感じる
今週のさそり座は、「命あるものは沈みて冬の水」(片山由美子)という句のごとし。あるいは、ふとした思いつきを確信へと深めていこうとするような星回り。
眼前に冬の水が広がっている。想像しただけで命が凍えてくるような光景ですが、掲句の「命あるもの」とは、たとえば池の鯉であったり、水槽の熱帯魚を思い浮かべればいいのでしょうか。
いずれにせよ、「命あるものは沈みて」という言い方の奥には、明らかに「命なきものは浮かびて」という表現が潜んでいるように思います。
身体が弛緩しきって、ただ水面に浮かんでいるだけの「命なきもの」に対し、「命あるもの」は確かな意志をもって水中に沈んで、ある時はじっと佇み、ある時はゆっくりと動き回っていくのだ、と。
ただ、そこに確かな生命の気配は感じられても、沈んでいればその姿を視覚で捉えることはできません。
その意味で、6日にさそり座から数えて「潜在的可能性」を意味する12番目のてんびん座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、まだ誰の目にも映らないけれど、自分にしか見つけられないものが確かにこの世にある、そんな直感に打たれていくことでしょう。
生きものとしての幅を広げる
冬の水中をのぞき込んでみると、夏に比べ非常に水が澄んでいる事に気づきます。これは冬になると水温が低下し、プランクトンの量が減少するためで、自然と魚たちも深場へと移動していきます。
魚というのは、基本的に水温の変化にも弱いですから、水温が安定している深場はエサの少ない冬には格好の避難場所でもあるのです。そしてこれは、さそり座のような固定宮(各季節の真ん中の星座)の人たちにも共通している特徴とも言えるでしょう。
たとえ「他の人から見たらしあわせじゃない」とか、一般的に「恵まれていると思えない」ような状況にいたとしても、なぜかそうした状況で「慰められた」という心理に至ることは珍しくありませんが、それは生きものとしての本能が壊れきった現代の「人間」の定義の幅がきわめて狭くなってしまったからでしょう。
今週のさそり座は、自分自身の人間として、生きものとしての幅を広げていくことで、自分に必要なものや場所を見つけていくことができるかも知れません。
今週のキーワード
命やすまる深場へ