さそり座
甘美な孤独
マッチ1本の灯り
今週のさそり座は、「マッチをすれば湖(うみ)は霧」という富沢赤黄男の句のごとし。すなわち、自分のための甘美な時間を必要としていくような星回り。
1本のマッチをすって束の間、手元がぼおっと明るくなる。するとあたりの霧もずっと深くなってきて、心休まる日陰や魅惑の夢へと誘われていく。
マッチの灯りがいつも甘やかなのは、なんでもあっけらかんと白日の下にさらしてしまう陽射しの魔の手が届かない、心の奥地へと自分の身を移してくれるからでしょう。
先の句は、寺山修司を触発して「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」と書かせたことで知られていますが、それは見事なまでの換骨奪胎でひとつの情緒を自分のものにしていった痕跡でもあります。
あなたもまた自分のための甘美な時間を作るためには、大きな壁のように立ちはだかる現実を押しのけ、心の中に浮かんでくる心象風景を拡大し延長した向こう側へと自ら突き抜けていかねばなりません。
ギーガーの場合
例えば『エイリアン』の造形をデザインしたH・R・ギーガーは、独特の世界観を有するカルトスターとなりましたが、創作の秘密について「自分の夢に出てきたものを描いている」と述べていました。
それが設定であれ真実であれ、いずれにせよ彼が隠遁生活の中で次々と作品を生み出していったことは確かです。
また実際にギーガーの絵を見た人の多くは、おそらくそこに強い性衝動の抑圧を感じる事と思います。それは彼は実際10代の頃に初めてキスをしたことで、しばらくの間性的興奮に襲われ、起きている間中、頭の中をエロティシズムが占めていた時期があったと語っており、その体験が創作に与えた影響も大きかったようです。
今週のあなたは、孤独に自分と寄り添い向き合っていく時間の中で、時間をかけて研ぎ澄まされ、育まれるものの力を再認識していくことでしょう。
今週のキーワード
換骨奪胎