さそり座
運命の三叉路
刹那の幸福
今週のさそり座は、「冬ぬくしバターは紙に包まれて」(中村安伸)という句のごとし。あるいは、刹那的な幸福を追求していこうとするような星回り。
背の低い直方体の紙に包まれたままの「バター」も、冷蔵庫から出して温かい室内に置きっぱなしてすればいつかは融けてしまう。
そこには不安と心地よさがないまぜになったような独特のニュアンスがあり、明らかにいつもは寒いはずの冬の最中に暖かい一日の、ほっとした、幸せな気分との取り合わせが意識されている一句。
幸福というものも、形に囲い込もうとしたり、いつまでも同じ形に執着してしまえば、途端に味気なくつまらないものになってしまう訳で、その意味で料理も人生も、溶けかけや崩れかけが一番おいしく感じるものなのかも知れない。
そうすると、紙に包まれてあるバターにただよう不安にも、どこか親近感さえ湧いてくる一方で、温暖化の一途をたどり、過剰にあたためられつつある地球の現状に改めて不気さを感じてしまう。
29日にさそり座から数えて「情感の高まり」を意味する5番目のうお座で約5カ月ぶりに海王星が順行へ戻っていく今週のあなたもまた、情感が溢れでてくる一瞬のうちにこそ、こころの真実を見出していくことができるはず。
純粋な意図
昔から、分かれ道に大きな樹が一本生えている三叉路が好きだった。夜にそこを通ると、昼間とはまったく別人のように暗い影を落としていて、こちらの心を試し、迷わせるのだ。
どちらの道を行くか、その時のインスピレーションだけで決めるということを何度かやっていると、たまに「あ、こっちで正解だった」と妙に確かな手ごたえを感じることがあって面白かったのだが(散歩なので、本来ならば特に決まった正解などありません)、振り返ってみると、おそらくそれは雰囲気に流されないで、自分の体調や気分にマッチした方の道を選べたということなのだと思う。
考えてみれば、私たちはいつも頭に誰かの顔や視線を意識して、無意識のうちにその意図を汲みとって行動していて、純粋に自分の意図だけに集中して何かを選択をするということがほとんどできてないか、たまに出来たとしても苦手なのではないだろうか。
今週のさそり座にも、人の顔色をうかがうのではなく、ただ自分の身体や感情とがマッチした最高の瞬間に集中し、それに従って何かを選ぶということをしてみてほしい。たとえ、たとえ大きな樹の下で誰かとの繋がりが切れていくとしても。
今週のキーワード
全集中の呼吸