さそり座
野生をつかむ
どんな日常にも草は生える
今週のさそり座は、「夜濯や一本の草浮かび来る」(西山ゆりこ)という句のごとし。あるいは、内なる腕白をむんずとわしづかんでいくような星回り。
「夜濯(よすすぎ)」とは夜する洗濯のことで、夏の夜は乾燥しており、夜風が立ってから洗濯物を干すことが多かったたため、夏の季語とされています。
不意に洗濯槽をのぞきこむと、そこに一本の草が浮いてきたという描写が、なんとも微笑ましい一句。
昼のあいだめいっぱい草原の中を遊びまわってきた子供の服についていたのか、それとも鬱蒼と茂ってきた庭の草を刈った際に自分の服についていたのか。まさか夫に付いていた訳ではあるまい、などと家族ひとりひとりへの思いが、水と共にグルグル回っていくようです。
ただどんなに身の周りをキレイにして、文明の利器の恩恵を受けていようと、必ずどこかに野生というものは紛れ込んでくるものであって、ここではそれを見つけた際に、不思議と嬉しくなっている自分を再発見しているのだとも言えるのではないでしょうか。
6月28日に「はみだす力」を司る火星がさそり座から数えて「秩序やルーティン」を意味する6番目のおひつじ座へと移っていく今週のあなたもまた、どんなに抑え込もうとしても抑えきれない野生のパワーを、改めて自身の生活や日常の中に見つけ出していくことになりそうです。
はらわたをつかむ
例えば服のセンスよりも、香りのセンスがいい方が、人としての好感度が上がりやすいという話を聞いたことがありますが、これはとても大事な教えです。
それは外側を覆う記号で相手を捉えるのではなく、内側から漏れ出した野生の感じ取った結果であり、そういうものをここでは「内臓の感受性」と呼んでおきたいと思います。
東京芸術大学で体育の先生をしていた野口三千三氏は独自の体操理論や人間哲学で知られた人物ですが、彼は絵を描くにも歌を歌うのにも「内臓の感受性」が基本となると考えていたようです。
そして、それを高めていくために、まず生徒に“はらわた”を“つかんでもらう”ことが先決だと、「家に帰ったら新聞紙でもひき、その上にしたものを両手でつかみなさい」というような課題を出したのだとか。
今週のあなたは些細な日常の中で、どこまでディープな感性を働かせていくことができるかが問われていくでしょう。それを実践していくには、まず自分の匂いに自覚的になったり、腹のうちにあるものや、等身大の自分というものを把握していくことが不可欠なのだと言えます。
今週のキーワード
内臓の感受性