さそり座
苦しみと革命の調和
神話的作法
今週のさそり座のテーマは、身の周りの不和の調停。あるいは、“柱”を立てていくような星回り。
人類のいちばん古い神話原型の一つに、人間が火を盗んだ話があります。これは環太平洋世界で多く見られるそうですが、ある神話では、はじめ人間は火を持っておらず何でも生で食べていた。ところが、天上の神々が火を使っておいしい食べ物を食べているのを見て、人間が天上から火を盗んできて、かまどに火をおいて料理をするようになった、と。
ただ、盗まれた側は「返せ」と言って怒り、天上と地上のあいだで不和が生じたため、和を取り戻すための調停をしていかなければならず、そこをどうするかで地域に応じて色々なバリエーションができていきました。
その意味で、料理をするということは、神の火を使ってカオス世界に秩序をもたらすという神事に他ならず、それが人間の地上での生活を支えてきた一方で、その裏では必ず高い柱を立てたり、高い山に登ったりして、天地の不和の調停が行われなければいけない訳です。
そして、もとは神事だったそうした行為は、時代が下るにつれて、芸術と見なされていくようになりました。花をいけるのも、俳句を詠むのも、塔を建てるのも、失われた天地の結びつきを再現するということが基本にあり、神話的には本来のエネルギーの流れをどう表現するかという点で共通しているのです。
6月21日にさそり座から数えて「人生哲学」を意味する9番目のかに座の初めで、日食と新月を迎えていく今のあなたもまた、一見バラバラに見える自分の人生のあれこれに、一貫した意味を与えるひとつの見立てを立てていくことがテーマになっているのだと言えるでしょう。
「ここより高い場所がきっとある」
今あなたはどこか収まりの悪い不安定さと未来への期待感のはざまでムズムズしているかも知れませんね。それはまさに、空に飛び立つ姿を地中で夢想している蝉の幼虫のようでもあります。
「あたしの孤独を持ち上げようとするのは小学校でならったライト兄弟の飛行機!
あたしの右の翼はあたしの苦しみです。あたしの左の翼は革命です。あたしが飛ぼうとするとき、このさむい空の上から心臓までまっすぐにオモリを垂らそうとするのは誰ですか?
あたしは、いつかは飛ぶのです。ここより高い場所がきっとある」
(寺山修司『千一夜物語・新宿版』)
そう、きっと「ここより高い場所」はあり、そこへは自らの翼で羽ばたくのです。今週中に行けるところまで行きましょう。今はそのための覚悟を決めるにはもってこいのタイミングです。
今週のキーワード
鳥瞰的まなざし