さそり座
余生の充実ということ
岡本眸の場合
今週のさそり座は、「雲の峰一人の家を一人発ち」(岡本眸)という句のごとし。あるいは、秘めたる意志を力強くたちあがらせていくような星回り。
作者は日本におけるキャリアウーマンの先駆けのひとりとして、時代の先端を走り続けてきた女性であり、また夫を若くして亡くし子供も持たなかったため、早くからひとりで生きていく覚悟を固めてきた人でもありました。
掲句は、夫を失った4年後に、自身が創刊した俳誌を飾った一句であり、いわば人生に対する信仰表明として詠まれたもの。時に作者52歳。
通勤の途中、思わず見上げた空に立ち昇る入道雲。それにまっすぐに向かっていく作者の思いは「一人の家を一人発ち」という「一人(ひとり)」のリフレインの中で、大きく反響していきます。
今では当時に比べ、一人で生きねばならない女性の数もずっと増え、もはや珍しい存在ではなくなってきましたが、それでも彼女の孤独感と一体となった静かな強さに励まされる人は多いのではないでしょうか。
5月11日にさそり座から数えて「生き返りと再武装」を意味する3番目のやぎ座で、土星の逆行(常識の反転)が起きていく今週のあなたにおいてもまた、自分で自分の背中をそっと押していくだけの力を奮っていくことがテーマとなっていくでしょう。
復員兵の境地
「戦時」から「戦後」つまり「平時」に戻り、軍務を解かれ帰郷してきた兵士のことを「復員兵」と呼びますが、今週のさそり座はどこかそんな復員兵の心持ちと重なっていくところがあるかも知れません。
やもすると、一度は捨てた命なのだから、彼らにとって戦後というのは”おまけ”のようなものであり、もはや達観しているものと、多くの人は考えます。けれど、もしそれが自分の成功や幸福そして社会の発展や平和の実現などへの無関心や軽視を意味するなら、それはまことに愚かなことと言えます。
一度は捨てた命だからこそ、本気で大切にするべきではないのか。生き残りだからこそ、第二の人生の荒波がどんなに厳しかろうと、残された余生を死んでいった仲間の分まで充実させて生きようではないか(作者の場合は夫の分まで、だろうか)。
そしてそうした余生の充実は、ただ不安を大きくするために悩むことによってではなく、「平時」から問題に感じていることについて調べ、聞き、どうしたらそれを解決できるか、そのために尽くせるかを考え行動することによって初めて実現されていくものです。
ただ悩んでいるだけの人が多いこの世の中で、自分の他に誰がそれをやるのか、と。それくらいのつもりで過ごしていきたい今週です。
今週のキーワード
いのちを燃やす